セルロイド・クローゼット

セルロイド・クローゼット DVD セルロイド・クローゼット

販売元:アップリンク
発売日:2001/09/28
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 この映画の存在を知ったのは全くの偶然でした。「ロングタイム・コンパニオン」の感想を書くために検索したら「セルロイド・クローゼット」のパンフレットのためにという文章がヒットしたのです。

【120本に及ぶハリウッド作品を検証し、削除シーンや、検閲の目を盗んで完成させたシーンの中に仕掛けられた驚くべき意味を暴いていく。
 ゲイ&レズビアンに対するアメリカ映画の中での見解は時代と共に変化してきた。軽視、蔑視される時代を経て現在にいたるまでの変遷を描く。

セルロイド・クローゼット」にはフィルム保管場所と偏見と差別から身を守るための逃げ場所という2つの意味がある。ふれることすらタブーとされてきたクローゼットを開け放ち、映画と共に歩んできたアメリカの文化、政治、時代の潮流をも描きだす、貴重なドキュメンタリー。】

 この解説だけで関心をもたれる方も多いと思います。私も拝見して圧倒されました。
 トム・ハンクス、スーザン・サランドン、ウーピー・ゴールドバーグほか登場。「モロッコ」「レベッカ」「ロープ」「ベン・ハ-」「理由なき反抗」「お熱いのがお好き」「紳士は金髪がお好き」「スパルタカス」(キューブリック監督・削除された入浴シーンを紹介)「明日に向かって撃て!」「テルマ&ルイーズ」「カラーパープル」「ミッドナイト・エクスプレス」「羊たちの沈黙」「フライド・グリーン・トマト」「マイ・プライベート・アイダホ」などが紹介されています。

Benhur3  あまりに濃い内容で何から書いていいか混乱しますが、まず最大の驚きは「ベン・ハー」の左の(正確にはこの少し後の?)シーンですね。ベン・ハーが親友メッサラ(スティーブン・ボイド)と再会し酒を汲みかわす。まだ映画を見る前、この写真に私も何かを感じはしました。乾杯の前に2人は腕をクロスさせて見つめあう。

「セルロイド…」では、2人は15,6の頃に恋人関係だったと説明されてます。スティーブン・ボイドにだけそれを明かして演技させたと。そう思って見ると、なるほどベン・ハーの方は飽くまで友人として接しているのに、メッサラには甘やかな、過ぎた恋を懐かしむような風情が見られるのです。

赤い河」でモンゴメリー・クリフトが若いカウボーイと銃を見せ合うシーンも紹介されています。銃は男性自身の暗喩なんですね。そう知って見ると赤面~! 今年いっぱい無料配信されてます。「ラスト・ショー」では閉館する映画館の最後の上映作品がこれ、ミズーリに牛追いに出発するシーンが。「シティ・スリッカーズ」でも同じシーンへのオマージュが出てきますが、いやー参った参った。

 50年代からはハリウッドの検閲が厳しくなり「熱いトタン屋根の猫」「去年の夏 突然に」などゲイであるテネシー・ウィリアムズ原作の映画はずたずたにカット。どちらも映像の紹介がありますが、特に「去年の…」ではセバスチャンが殺される様子がモンスター映画と共に出てきて嫌でもBBMを思い出させます。原作文庫の解説にありますよね、【「あちら側」の人間はモンスターとして殺されなければならない、というのは「噂の二人」の頃から変わらない、ハリウッド映画が同性愛を描く際のお約束】。

 これだから「真夜中のパーティ」に「全員生き残るのが新鮮だった」という感想が出てくるのですね。(解説者はゲイ、レズビアン)「ゲイが誰ひとり死なないことが新鮮」だなんて、どう解釈したらいいんですか? そんな彼らが「メーキング・ラブ」の登場にどれほど感激したかは容易に想像できます。反発も大きかったことは冒頭に紹介したパンフレットへの文章に明記されてますね。

 すべての映画に言及することはとても出来ませんが、「噂の二人」などまだ感想を書いていない作品についてもやはり書かなければ、と思いました。「セルロイド・クローゼット」、ぜひ見ていただきたい作品です、レンタルにあるかどうか、廉価版が出るといいのですが。私もためらったのですが買ってよかったです。これから何度も見てしまいそうです、とても考えさせられる映画でした。

 これも同作品で紹介されている1927年の「つばさ」での友人へのキス(頬というより唇に近い部分に)にはため息が出ました。サイレント映画です。「友情ほど美しいものはない」という字幕が出ます。なんと第一回アカデミー賞の作品賞受賞作だそうです。キスに言及しているレビューは皆無ですが、あのシーンだけでも意義があると思います。

つばさ DVD つばさ

販売元:ファーストトレーディング
発売日:2006/12/14
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ジュテーム・モワ・ノン・プリュ

B00005hqum01  異性愛と同性愛を絡めた、ミステリアスな三角関係を描くラブロマンス、ということになっております。制作は76年? 30年も前にこんな映画が。

 セルジュ・ゲンズブールが脚本、音楽、監督をつとめたそうで、主演はもちろん当時の愛妻ジェーン・バーキン。元々細身で中性的なジェーンはベリーショート(ヅラだったらしい)。少年のように見えました。彼女に関心を示すゲイのクラスキー(ジョー・ダレッサンドロ)。若き日のジェラルド・ドパルデューも出てたらしいけど記憶になし。

  同性愛の関係にあるゴミ運搬屋の青年ふたりは、ある町でジョニー(バーキン)という痩せて胸のうすい少女と出会う。クラスキーとジョニーは意気投合、しかしクラスキーは普通のHはできないわけです。でバックからお尻で結合をはかるものの、いきなり入るはずありません。ジョニーは「ギャー!」と絶叫。ほんとに痛そうでした。

 クラスキーの相棒からは嫉妬され、女の子らしいワンピースを着れば「なんだその格好」とクラスキーに嫌な顔をされ、恋するジョニーはぼろぼろ。「美少年」ではなく女性として愛されたいのに。

↓この作品の考察。エログロな映画だと捉えられていたようです。でもトリュフォーが認めたのなら立派なもんです。私も楽しく見ました。

http://homepage2.nifty.com/fyana/french/serge4.htm

 で、この映画を見て思ったのは。やっぱり男としか交われない男もいるのだろうな、と。

 また「BBM」の話になりますが、イニスもジャックも結婚して子供をつくっている。バイに近いのだろうか。特にイニスはゲイじゃないという意見も多くて、もう何がなんだか。

 昔、婦人雑誌の人生相談で、ゲイの夫と離婚したい、というのがありました。かいつまんでご紹介しますが。

 夫はすごいマザコンであることが見合い結婚後に発覚。そして初夜からほとんど夫婦の営みが成立しなかったそうです。すごく無理して1度だけ出来たそうなんですが、それで奥さんは妊娠してしまった。

 その後、何がきっかけか忘れましたが夫が同性愛であるとはっきりしたそうです。離婚を決意するも向こうの母親は認めない。どうしたらいいでしょうか、と言った内容。

 回答は、それでも離婚できる、だったと思います。肝心の夫の意向も記憶にないんですが、母親の言いなりだったような。

 これを読んだとき私は中学生だったかも。母が買ってくる雑誌のそういう記事は、そりゃもうじっくり読んでおりました。で思ったのは、同性愛の男性は女性とHするのは大変なんだろうな、と。でも、努力すれば、いやただ寝るだけならOK。という男性も多いようですね。

「ジュテーム…」のクラスキーは、女臭くないジョニーとならお尻ですることは出来そうでしたが、それって女性として彼女を愛しているわけではなく。まあ、お互いが納得すればそれでいいんでしょうけど。

 これ以上考えても混乱するばかりなのでこのへんにしておきます。結局、セクシャリティってひとりひとり違うのね。「100%異性しか愛せない人から100%同性のみ」、まで1%刻み(千分の1%刻みかも)まで色々ありそう。

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スパニッシュ・アパートメント

スパニッシュ・アパートメント DVD スパニッシュ・アパートメント

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2004/08/06
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 かつてスペインは私にとってはヨーロッパ1、関心の低い国だった。
 この国の典型的なイメージ、フラメンコと闘牛と太陽と情熱。全てが私の関心外だったからだろう。
 しかし2年前にスペインのバレエ・ダンサーIgor Yebraが大好きになり「スペイン大好き」に変わったのだから、全く人生とは不思議なものだ。

 スペイン熱が高まりつつあったときに映画「スパニッシュ・アパートメント」が公開された。私は重い腰を上げ、その年初めて映画館に行った。(ついでに言えば、前年2003年は1度も映画館に足を運んでいない)

 舞台はバルセロナ。主人公のフランス人学生グザヴィエ(ロマン・デュリス)が、将来のため「エラスムス計画」を利用してバルセロナに経済学を学びに行く。
 汚れた裏通り。うさんくさそうな若者たち。典型的な「治安悪いスペイン」に笑ってしまった。
 期待したほど面白くはなかった。テーマは若者の自分探し。二十歳くらいで観たら、もっと違った感想になっていたと思うが。

 この映画をGLBT関連に入れるのは、グザヴィエがアパートに連れてきた女子学生がレズビアンだから。彼女がフラメンコの先生に誘惑されるシーンは熱っぽくてクラクラ~。彼女はグザヴィエに女の落とし方も教える。しかし調子こいたグザヴィエが暴力的なことを口走ると「それはダメ」ときっぱり。このへんやっぱり男はデリカシーがわかってないなー。

 グザヴィエの留学先がバルセロナ、カタルニアの中心地なのが興味深かった。大学での講義はカタラン(カタルニア語)で行われ、普通のスペイン語しか知らない留学生は抗議するが、
「だったらマドリッドの大学へ行け。ここはカタルニアだ」と一蹴されてしまう。スペインは(言語事情だけでも)複雑な国なのだ。

 前述したスペイン人ダンサーも、スペイン人というより先ずはバスク人だ。バスク人は民族としての誇りがとりわけ強いと聞いているが、好きな人のことは何でも知りたいものだから、とりあえずスペイン語の勉強を始めた。挫折しっぱなしだが、まったく知らないよりはいいか。

 スペイン・イスラムの時代から国土回復運動へ。海洋帝国の黄金時代、そして没落。「物語 スペインの歴史」(中公新書)を読んで、スペインへの関心はさらに高まった。著者の岩根氏の結びの言葉に深く共感してしまう。

「フラメンコと闘牛と太陽の、情熱的な国スペイン。明日のことを思い煩うことなく今日を楽しみフラメンコを踊り、闘牛に熱狂し、昼寝をする民族。
 こんな能天気な観光ポスター的標語はいいかげんに破り捨てねばならない。
 スペイン人は、それほど気楽な人たちではない。もっと真摯で寡黙、そして働き者である。」

物語 スペインの歴史―海洋帝国の黄金時代 Book 物語 スペインの歴史―海洋帝国の黄金時代

著者:岩根 圀和
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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スリーサム

B00005gba709 かつて、けっこう好きだったスティーヴン・ボールドウィン出演作。NHKで放映してたドラマ「ヤング・ライダーズ」で惚れました。ボールドウィン3兄弟の末っ子なんだけど、あの厚ぼったい唇が♪ マイケル・シェンカーと唇だけ似てる? 存在感のある唇が好き。http://www.biwa.ne.jp/~cowboy/index.htm

 さて。三角関係のお話です? 大学の寮で仲良く同室だったスチュアート(スティーヴン)とエディ(ジョシュ・チャールズ)の部屋にアレックス(ララ・フリン・ボイル)という新入りが。男みたいな名前のため間違って彼らの部屋をあてがわれたのだ。で、3人で暮らし始めちゃう。

 スチュアートはアレックスに気があるのに、アレックスは繊細なエディが好きで、エディはだんだんスチュアートにときめいて…。スチュアートにその気はないって言ってるのに。「じゃあ寝るだけでいいよ」ってオイオイ。

 エディはそんな訳でアレックスにはぜんぜんなびかない。ある日、スチュアートが買い物から戻ると、アレックスがボロ泣きしている。「こんなにエディが好きなのに!」。スチュアート、紙袋を床に放り出し、ぐわし! とアレックスを抱きしめる。ベッドシーンに突入。

 その後、3人は自然にベッドインするようになったんだっけ、記憶がおぼろ~。川べりで3人が素っ裸になりイヴ&2人のアダム~、って感じになった時、小学生の遠足ご一行様が通りかかり。3人は思い切り笑われてしまう。エデンの園、はしょせん絵空事。

 私としてはスティーヴンが男に惚れられるシーンだけで十分でした。3人でベッドインの時はちょっと「ガラスの部屋」っぽかったかな。淀長先生はアメリカ版「突然炎のごとく」、的な評をくださってるけど、そんな高尚なもんじゃなかったかと。でもけっこう好き。まだレンタルできるかな? 久々に再見したいのだけど。

http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/950314ydg.html

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD10865/index.html?flash=1

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司祭

B00005eljd09  私はレンタルで見たのだけど、これも日本では入手困難なのねー。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005ELJD/nifty0b5-nif1-22/ref%3Dnosim/503-2004234-7919944

 司祭グレッグ(ライナス・ローチ)が夜な夜な男を求めて~、という、かなりの問題作ではあるが。それだけじゃなく彼は熱心な司祭であり、悩める少女の相談にも乗る。なんと彼女の父親は実の娘に! それを知ったときの母親の反応。[Animal!]とののしってました。ケダモノ。それ以外に言いようがないわな、確かに。

 グレッグと一夜限りじゃない関係を望んでいるらしいグラハム(ロバート・カーライル)もいい感じだったし、ほんとイギリスの役者も根性すえて演技するよね~。

 この映画はアメリカではあちこちで上映禁止とか、それを聞いてアメリカってほんとに保守的な国だなあ、とだんだん見えてきたというか。ローマ法王も真っ青、の宗教的問題については私はわかりませんが。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=29048

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD29941/index.html?flash=1

「イージーライダー」でアメリカの田舎の怖さを知り、「アポロ13」で「?」が広がった。この映画を見た頃はまだアメリカに対して幻想を抱いていたのかもしれないが、気になったのはヘイズ乗組員が宇宙でつぶやく言葉。
「こんな遠くまで来ちまって。ハイスクールの同級生は故郷の町を出たこともないのに。」
 そんなものなのか、アメリカの田舎町は。自分の町を出ることさえ難事業なのか。

 と、だんだん話が逸れちゃいましたが、「司祭」、色んな意味で忘れられない映画です。

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姉妹

 ナタリー・ドロンとスーザン・ストラスバーグ(アクターズ・スタジオを創設したリー・ストラスバーグの娘)が姉妹にしてレズビアン関係というトンデモ映画です。そんなの中学生の時に見るなよ、自分。詳細は下記から。

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD12151/index.html

 ほとんど何も覚えてないんだけど、あらすじの詳細を読んで、やっとなんぼか思い出してきました。「個人教授」でナタリーが気に入った私は、彼女の主演作&レズものというのでドキドキしながら見に行った。

 妹マルタ(S.ストラスバーグ)が結婚したのは姉ディアナ(N.ドロン)から逃れるためだったけど、訪ねてきたディアナとマルタは結局、妖しいシーンを繰り広げていたような。

「ガラスの部屋」が公開された頃、立て続けにゲイ&レズビアン・テイストの映画が公開された。これもそのひとつで、「明星」の映画ページの特集に載ってたような。付録だったかもしれないけど。そこに、「フランスのレズビアンはどちらも女性らしくして女性の美しさを愛でるのだ」といったことが書いてあった。

 私の抱いていたレズビアンのイメージって、短髪、胸には晒を巻いて男装。平たく言えば宝塚の男役のイメージだったから、フェミニンな2人が生まれたままの姿で愛し合うって新鮮に思えた。自分が女であることを十分に認識して、なおかつ女を愛するってのは、この頃、はじめて接した世界だったわけ。いやー、どきどきしました。

 それまでのレズビアンのイメージって、いま思えば性同一障害の女性+普通の女性で、異性愛なんだよね。自分の肉体に違和感を感じ、本当は自分は男である。恋愛の対象は女性だ、という人が、男装(本来、装いたい服装)して女性を愛する、ってことだろうから。

  さて、「姉妹」での姉妹の濡れ場。服を着たままだったかもしれないが、それはそれはねっとりと妖美で。だけど、やっぱり頭の中で渦巻く、「何故に姉妹で?」と言う疑問は当時も今も変わりまへんな。

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さらばわが愛~覇王別姫~

さらば、わが愛/覇王別姫 DVD さらば、わが愛/覇王別姫

販売元:角川エンタテインメント
発売日:2005/11/25
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 レスリー・チャンが自殺したのは3年前の4月1日。「さらばわが愛」(93・香港)を再見して、しみじみ彼の貴重さを思う。
 私は特別、彼のファンではない。ただ「男たちの挽歌2」をTVで見て、はかなげな笑顔が気になった。それに敵の目を欺くために味方から銃で撃たれる、それも至近距離で。下手すりゃ絶命である、なんてことをするのだこの人は。捨て身のキャラが似合う彼に惹かれるものがあった。

 1925年の北京、貧家の子や捨て子が親方に虐待されながら京劇のスターを夢見て修行に励む。
 耐えられなくなった小豆は脱走するが、京劇の舞台「覇王別姫」を見てかばってくれた石頭を思う、自分が虞姫、石頭が項羽として舞台に立つ日を幻視していたのか、うるむ目で舞台を見つめる小豆。涙が彼を肩車していた少年の顔をぬらす。

 長じて蝶衣(レスリー・チャン)、小樓(チャン・フォンイー)は花形コンビとなる、そして舞台で「覇王別姫」、四面楚歌で有名な愛姫・虞と項羽の物語を華麗に演じる。
 蝶衣のあでやかさ、小樓の豪快さ、観客は熱狂する。当時の京劇小屋はまるで闘牛場のような熱気で圧倒される。
 小樓は結婚するが、蝶衣は舞台と現実の差が判らなかったかのようだ、それほどに小樓を愛してしまっていた。彼の結婚は裏切りに思えただろう。
 その間にも時代は流れる、日本の中国侵攻、終戦、国民軍の台頭のあと中華人民共和国が建国。そのたびに翻弄される二人。
 特に文化大革命のエピソードは悲惨だ、二人は互いを告発し合うような羽目に陥る。蝶衣にしてみれば、自分を共演者としてしか見てくれない小樓への屈折した思いがあったのか。

 77年、老いた二人は再会し、誰もいない舞台で「覇王別姫」を演じる。「昔のようには体が動かない」と笑う小樓。蝶衣は彼と最後に舞台に立てて思い残すことはなかったのだろう。床に倒れた彼を見て、小樓は「蝶衣!」と叫んだあと笑顔になって子ども時代の名を呼ぶ、「小豆」と。

 私にとっては「さらばわが愛」という映画はレスリー・チャン=蝶衣がすべてだった、彼の小樓への思いは強く深く一途過ぎた。
 深夜放送で録画したビデオ、いつ録ったのか、レスリーの生前であったことは確かだ。最後にレスリーの元気な姿が映っていた、「皆さん、今度、大阪と東京でライブやるので来てください」。
 彼の笑顔に、私の涙腺は完全に決壊してしまった。

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