破軍の星

破軍の星 (集英社文庫) Book 破軍の星 (集英社文庫)

著者:北方 謙三
販売元:集英社
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 北方謙三といえば、かつてハードボイルド小説で一世を風靡した方、私、けっこうファンでした。ン十年前ですが、某出版パーティに仕事でたまたま出席した私。彼がゲストで登場と知り、舞台に駆けつけてみれば、今で言うところのメタボ系で、がっくりした記憶が。そんな彼が歴史小説に活躍の舞台を移したのは意外でした。

 私は何故「破軍の星」を読むに至ったのか? 思い出せません。北斗七星が破軍星【(陰水・「耗」)………殷の紂王。暴虐無人な暴君。妲己のそそのかしによって国を傾ける。「破損」「消耗」「破壊」「激変」を主宰。】であることは後に知りました。滅びの美学に弱い私。しかも、彼の末裔が何故か南部藩に居を移し、津軽藩の誕生とともに滅びたという史実がありました。とにかく主人公の北畠顕家は滅びる運命にあったということです。美貌を謳われた彼は、21歳の花の盛りに落命。NHK大河ドラマ「太平記」でこの役を演じたのは後藤久美子でした。

 昨日書いたように、彼の父親は北畠親房でございまして。近藤正臣が演じておりましたー。弓の達人として登場したゴクミ@顕家の最期は「弓がのうては戦えぬ」でしたか。訃報を知らされた親房は、「顕家」と絶句。期待の長男だったんですよねー。なにゆえゴクミが演じたのか、今ならきれいどころの若衆は大勢いますが、当時(91年)は、人材不足だったのかな、と。

 Wikipediaによれば、

【南朝方公家・武将北畠親房(後醍醐側近の長):近藤正臣 (当初は平幹二朗の予定だったが降板。)
北畠顕家(親房の長男):後藤久美子
天才的な美少年であったと言われ、その人物像に近付けるべく女性アイドルの抜擢となった。
千種忠顕(後醍醐の側近):本木雅弘 】

 モッくんにはぜんぜん気づきませんでした、ごめんねー。

 伊勢北畠家が本家なんでしょうけど、なんだか複雑でわからん。南部の北畠家と同じころに滅亡したようなんですが、一応命脈は保たれているのでしょうか。わけのわからない記事になってしまいましたが、ラストは「明日に向かって撃て!」風の、ちょっと明るい救いのあるもの、とだけいっておきます。本当に忘れられない小説です。今の俳優なら誰が似合うでしょうか、小説には顕家が「蘭陵王(らんりょうおう)」を舞ったという記述もありました。曲の由来としては、

【むかし、中国に「北斉(ほくせい)」(549~577)という国がありました。 その国に長恭(ちょうけい)という王がいたのですが、あまりに顔が美しく、 戦場で兵士の士気が上がりませんでした。そこで長恭は、 いかめしい仮面を付けて、戦の指揮をとりました。するそのかいあって大勝利を得たのです。 これを喜んだ部下たちが作ったのが、この舞であると伝えられています。】

 てさあ。王が美形だと士気が上がらないっつーのが、よくわかりません。とりあえず「ブ」な面をつけて勝利したわけですね。実演も見られるなんていい時代ですね。お面の下は超美形だと信じてご覧ください。

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愛の手紙(3)

ゲイルズバーグの春を愛す  ハヤカワ文庫 FT 26 Book ゲイルズバーグの春を愛す ハヤカワ文庫 FT 26

著者:ジャック・フィニイ
販売元:早川書房
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愛の手紙」は、あれからも時折、読み返しています。こんなに愛せる小説も珍しい、主人公は「ジェイク」ですし。原文で読みたいなーと思いつつも、絶版のようであきらめていました。が、ここにきて、ヘレンの墓碑銘が気になって仕方ないのです。英語では一体なんと表現されていたのだろう? どうにかして知りたい! 再び「ゲイルズバーグの春を愛す」の原作を求めて検索したけど、ダメでした。

 最後に、わらをもすがる思いで、Amazonのレビューを覗いてみたら。あったのです、答えが。まさに灯台下暗し。湯島杢兵衛さん、ありがとうございます! この感謝の気持ちをどう伝えたらいいのでしょうか!?

【相手からの最後のメッセージに「とっても大切なキーワード」が添えられています。
訳者(故人の福島正実さん)は何故きちんと訳さなかったのだろう?
(ニュアンスが難しいです)

『愛の手紙』の原作を読んでこのキーワードの意味に気が付きました。
頭を金槌で打たれました。
心臓をわしづかみにされました。
このキーワードを読み飛ばした僕は話の半分しか理解しなかったのです。通りいっぺんに 読まれた方も,原作の意味を知ったら,きっと感銘を新たにするでしょう。】

 どうですか、湯島さんのレビューを読むと、「愛の手紙」を読みたくなるでしょう! 湯島さんは、なんと原文のURLを紹介してくださったのです。こちらです! そのキーワードを目にしたとたん、涙がこみあげました。本当に福島さん、どうしてこれを~? でも確かに難しい、もしかして福島さんは「原文を読め」と言いたかった? 

*以下、ネタばれとなります。どうぞ「愛の手紙」を読んでから、お読みくださいね。原文だけ読んでもいいと思いますが、和訳の後でないと、湯島さん同様(私も)「頭を金槌で打たれ、心臓をわしづかみにされる」ほどのショックは味わえないと思います。

 翻訳では、ヘレンの手紙と墓には「永遠の思い出のために」。

 ところが、原文では手紙では”I will never forget.”

 墓碑銘には、I NEVER FORGOT

 この差に私もやられました。生涯、ジェイクを思って生きていこうと決意した若き日のヘレン。その決意を貫き通した証を墓に刻んだヘレン。

 さらに最後の1行。ジェイクもまた、Neither will I. と、ヘレンを忘れずに生きていく、と。

 なんだかもう、胸がいっぱいで。

 これから、じっくり原文を味わいます!

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わたしを離さないで(2)

Never Let Me Go Book Never Let Me Go

著者:Kazuo Ishiguro
販売元:Faber and Faber
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「わたしを離さないで」にコメントを頂き、とても嬉しいです。あの川の部分をどうしても原文で読みたくて、Amazonで「Never let me go」をゲットしました。969円と破格でした、円高の恩恵?

’I keep thinking about this river somewhere, with the water moving really fast.

And these two people in the water, trying to hold onto each other, holding on as hard as they can, but in the end it's just too much.

The current's too strong. They've got to let go, drift apart.

That's how I think it is with us.

It's a shame, Kath, because we've loved each other all our lives.

But in the end, we can't stay together forever.'

 訳も素晴らしかったですが、原文はさらに沁みます。平易な英語だと聞いてはいましたが、BBMの原作よりは確かに分かりやすいです。少しずつ読んでいくつもりです。

 さて。bk1の書評もなかなかでした。yukaさんのコメントに【Amazonで★の少ないレビューは やはり何か他人の興味を無視するようなレビューになっていて、 いろいろな面で(BBMと)共通するなぁ】とあって苦笑。BBM記事を盛んに書いていた頃、自分だけが、自分の意見だけが大事な人が多いのだなあと嘆息したことが何度もあったので。自分が大事なら、なおのこと他者の主張も認めてほしかった。自分の意見だけ通そうとするのは如何なものでしょうか。

 kママさんは、【心の深いところをすっぽりどこかへ持って行ってしまわれたような感覚です。そして、BBMと同じように「なぜ?」という、答えの出ない問いが自分の中で渦巻いていました。】

 とコメントをくださいました。ああ、本当にそんな感じでしたね。yukaさんが書いてくださったのですが、

【運命を受け入れ自分の欲望を最小限に抑えながら真摯に生きる。
そんな主人公の淡々とした日常が、淡々としているが為に切なさがじんわり沁みてきて、
最後に何かに突き動かされるように悲しくなってしまいました。

BBMで、自分で解決できなければ、耐えるしかないというくだりを、
この作品でも思ったんでした。】

「自分で解決できなければ、耐えるしかない」。

 確かに「わたしを離さないで」の彼らも、そんな風に覚悟して生きていたような気がしますね。運命は受け入れるしかないんだという静かな諦めと、許された時間、自由、愛を精一杯、いとおしみ、楽しもうという、つつましくも前向きな気持ち。

 ページを繰るたびに、脳裏に浮かぶのは、イギリスのどんよりした曇り空(映画その他で植えつけられたイメージですが)。その下で懸命に生きた、キャシーやトミーのことを、これからも考え続けていきます。

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わたしを離さないで

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) Book わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

著者:カズオ・イシグロ
販売元:早川書房
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 先日、yukaさんからBBM記事にコメントを頂いたとき、この「わたしを離さないで」を読んで【絶句してしまったのですが、BBMを観た後の涙と同じ涙に気づきまして、こちらにお邪魔した次第です。内容はもちろん全く別物なのに。。】とあって、とても気になりました。作者のカズオ・イシグロは大好きな映画「日の名残り」の原作者ですし。どうしても読まなくては!

 主人公キャシーは優秀な「介護人」。日本の「介護士」とは微妙に異なる仕事のようです。盛んに触れられる「ヘールシャム」という地名? 謎だらけの展開ですが、それ以上に予備知識は仕入れずに読み進めるうち、意味深な邦題が気になり、原題はなんというのだろう? それが「Never let me go」だと知った瞬間、BBMの「I will never let you go」が頭の中で渦巻きました。まるで対のようなタイトルではないですか。

 先ほど読み終わって、ショックというのではないけど、じわじわきています。確かにこれはBBMと同じ根っこをもつ作品、と感じました。解説には「ごく控えめにいってもものすごく変わった小説であり、作品世界を成り立たせている要素一つ一つを読者が自分で発見すべき。予備知識は少なければ少ないほどいい作品」とあり、大きく頷いてしまいました。「逆説的な普遍性を獲得している作品」との言葉にも納得です。読みながら何度も、いったいイシグロはどこからこんな物語を紡ぎだしたのだろう、といぶかりましたが、もちろんイシグロの内部から出てきたものなのです。大変な妄想力に脱帽するのみです。

 ラスト付近に、こんな部分があります。

「おれはな、よく川の中の二人を考える」。流れが速い川の中で、互いに必死でしがみついているが、流れが強すぎて結局は手を離してしまう。そして別々に流される。自分たちはそれと同じだろ、とある人物が言うのです。

 川! BBMにも何度も出てきた川。即座にイニスとジャックを思い出したのは言うまでもありません。彼らの人生も、その愛と別れも、この「川の中の二人」のようでしたね。抗いきれない強い力に引き裂かれた。ほかにバックミラーのエピソードもあって、またDVDを見たくなりました。

 最後にyukaさんに再度、お礼を申し上げます。こんな素晴らしい小説と出会わせて下さり、感謝あるのみです。おかげさまで、ますますBBMへの愛を深めていけそうです。

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デミアン

デミアン (新潮文庫) Book デミアン (新潮文庫)

著者:ヘッセ,高橋 健二
販売元:新潮社
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 今はヘッセを読む人が激減しているそうですね。私ら(から上)の世代ではポピュラーな作家だと思うのですが。高校時代の英語教師は中央大学でドイツ語文学をやりたかったと。当時、ヘッセの翻訳の第一人者、高橋健二氏が教鞭をとっていたそうなんです。でもドイツ語じゃ食べられないから英語を専攻。

 なんて昔話は置いといて、私にとってヘッセといえばまず「車輪の下」、ダイジェスト版を「小学六年生」あたりの学習誌で読んだ覚えが。落ちこぼれた元優等生が、年上の女性にキスの雨を浴びせられて「もうやめて」と息も絶え絶えになるシーンにドキドキしたものです。

「デミアン」は幼い頃からおもちゃ箱の中など、その辺に転がっていた文庫本、もちろん高橋健二訳の新潮文庫でした。父の蔵書だったのでしょうか、あまり本らしい本のない家でしたが。私は読書好きだったけど、「デミアン」は子供には難しすぎました。奥付を見たら何十版目かの発行で、その日付は私が生まれた日でした。それでいつか読もうと思って、読んだのは中学時代だったのでしょうか。そしてその本が高校での親友との出会いにつながったのですが。進学校に入り、周囲はすべて自分より優秀に見えていた頃。「私、英語駄目なの、教えてね」と声をかけたきた人と、30数年たっても交友があるのは嬉しいことです。

 最近、嫌でも高校時代を振り返させられる事件がありました。思い出すのはクラスに女子が11人という、半端な数だったこと。なんとなく2人ずつくっついて、それこそトイレに一緒に行ったりしたわけですが、奇数だと一人あぶれるわけです。正直、あぶれなくてよかった、と当時の私はきっと思っていたはず。変な言い方ですが「カップルになれなかった人」は割合きつい性格で、某カップル(もちろん女子二人のこと)になんとなくくっついていましたが、あぶれたことに変わりはなく…。

 私と声をかけてくれた友人とは話が異様に合いました。ヘッセの作品でも盛り上がり、同じ作品の同じ部分に心揺さぶられた野も共通。確か「デミアン」だったはず、と昨年、読み返したみたのですが、その部分がどうしても見つからないのです。もしかしたら、「デミアン」ではなく「知と愛(ナルチスとゴルトムント)」だったのかも? 「デミアン」も中身を忘れてたけど、「知と愛」はさらにおぼろな記憶です。でも、友人と盛り上がった記述はしっかり覚えていますから。もう一度、なつかしいヘッセの世界に足を踏み入れてみましょうか。

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愛の手紙(2)

Yun_1658Photo by (c)Tomo.Yun

愛の手紙」、何度読んでもいいです、英語版の表紙画像はどんなの、と思ったらあまりにイメージが違うのでがっくりきちゃいました。日本版は内田善美さんでよかったー! 今回はフリー素材サイトから時計の画像をお借りしました。

 文章が素敵なのは原作はもちろん、翻訳の福島正実さんの尽力もあると思います、「夏への扉」と同じ訳者だと知ってなおさら読みたくなったのです。今日はちょっと「愛の手紙」の冒頭付近、主人公ジェイクが自分語りをするシーンを。

【ぼくは24歳、背が高く痩せている。節約のためにブルックリンに住み、その金を稼ぐためにマンハッタンで働いている。】ジェイク(ジレンホール君のことです)は痩せているとはいえないけど、まだ少年ぽさの残る3,4年前の姿に、こちらのジェイクを重ねてしまいます。若いこともありますが、小さなアパートに住む(「電話ボックスみたいに狭い」台所)、あまり経済的に恵まれていない様子が伺えます。

【ぼくのガールフレンド、ロバータはとてもいい娘だった。だが、(中略)ふとぼくは、彼女とこれきり二度と会えなくたって、別にどうとも思わないだろうということに気づいたのだ。】 

 いつもこうしかならない(恋人と長続きしない?)のはぼくにどこか欠点があるのか、一生ほんとに一緒にいたい娘に出会う能力がないのか、とジェイク。悩みというほどではないかもしれないけど、やるせない欠落感と孤独。こんな素地があったからこそ、ジェイクはあの手紙を発見できたのかもしれません。

 マシスンが脚本も手がけた「ある日どこかで」には「フィニイ」が出てきます。主人公リチャードの学生時代の恩師がフィニイという名なのです、ジャック・フィニイを意識した名? と思ったら。【時間旅行に関する研究者として「フィニー教授」が登場するが、マシスンがSF作家ジャック・フィニイの著書『ふりだしに戻る』(Time and Again 1970年)の影響を受けているためである。(Wikipedia「ある日どこかで」より)】!

「愛の手紙」はBBMの原作にも匹敵する優れた短編だと思います、こんなに想像力を駆り立てる小説と出会えたのも久々のことでした、特にラスト付近については、あれこれ考えてしまいました。

*以下、ラストに触れています。ぜひ「愛の手紙」を読んでからご一読ください。

 なんといってもせつないのは、ヘレンの写真に書かれていた「永遠の思い出のために」という言葉ですね。まさに万感の思いをこめてヘレンは書き添えたのでしょう。最愛の男性は、80年未来の青年でした。どう足掻いても生きて会うのは不可能と知ったとき、それしかなかったでしょう。しかし、「もうひとつの方法」が残っていました。ジェイクもそのことに気づいて、ちゃんと見つけましたね。

 ジェイクが探し当てた墓に「ヘレン・エリザベス・ウォーリイ」と独身時代の名が刻まれていた意味には、気づくまで時間がかかりました。ただジェイクが見つけてくれることを願い、旧姓を刻ませたのだとばかり。が、そうではないはずです、ヘレンは結婚しなかったのです。嫌で嫌で仕方ない婚約者でも、ジェイクからの手紙が届かなかったらヘレンは従ったはず。でも、決して会えない相手であっても愛し愛されているという実感を得たヘレンは、きっぱりと結婚を拒んだのでしょう。その強さをジェイクの手紙がくれた。

 ヘレンからの手紙と写真はジェイクの元に。ではヘレンが受け取ったジェイクの手紙は? もちろん、ヘレンの棺に納められたのだと私は確信しています。

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ゲイルズバーグの春を愛す

Higurasinomori愛の手紙」にportiaさんがコメントをくださいました、ありがとうございます。内田善美さんが大好きだそうで、内田さんが「ゲイルズバーグもの(かすみ草にゆれる汽車とか)」を描かれていたと初めて知りました。「ゲイルズバーグの春を愛す」の解説によれば「gale's burg」とは詩語でいえば「そよ風の街」なのだそうで、なんともロマンチックですねー。「かすみ草にゆれる汽車」の扉絵だけは拝見しましたが、なんとも美しい(セーラー服の美少年です)。現在、内田さんの作品は入手が難しいようですね、読みたいのに~残念です。復刊リクエストしなくては!

 さて、「ゲイルズバーグの春を愛す」を読了しました。収められた10編、どれも面白かったですが、やはり「愛の手紙」は唯一のラブストーリーでもあり別格のすばらしさです。そしてフィニイの短編は、翻訳の福島正実さんによれば「現実否定を正面に押し出した作品がほとんど」ということです。「ファンタジーとは現実を見てみぬふりをするものだが、フィニイは積極的に現実を拒否する、こんな現実は嫌いだとそっぽを向き、自分の好きな第二の現実を作り出す」のだと。10作読んでみて納得です。具体的には是非、実際に読んでみてください、世界が変わるかも? 街や家が意思を持っている(と思える)お話など味わい深いです。

 portiaさんは【私はジェイク・ジレンホール君も大好きなのですが、彼の第一印象は「うわ~ 内田 善美のマンガから ぬけだしてきたみたい・・・」でした。観たのは ムーンライトマイルでした。】と。ジェイクが内田さんの? 嬉しいけど誉めすぎでは。と思いつつ、この画像の少年は「ムーンライトマイル」のジェイクに見えなくもない? かなり美化したら、ですけど。

「ムーンライトマイル」の舞台はマサチューセッツ州。ニューイングランドというのが内田さんの世界にぴったりな気がします。「ドニーダーコ」も同じくマサチューセッツ州。ついでに「遠い空の向こうに」はウエスト・ヴァージニア州。「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」はシカゴ=イリノイ州(ゲイルズバーグも)、BBMはもちろんワイオミングとテキサス州、「ゾディアック」はカリフォルニア州(サンフランシスコ)などとジェイクの出演映画の舞台をアメリカ地図に探して楽しい時間を過ごしたのでした。

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愛の手紙

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Book ゲイルズバーグの春を愛す ハヤカワ文庫 FT 26

著者:ジャック・フィニイ
販売元:早川書房
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 きれいな表紙ですね、内田善美さんの絵と聞けば納得です。短編集「ゲイルズバーグの春を愛す」のラストの「愛の手紙」をモチーフにしているのだ、と読了した今はわかります。何故にあの作品がカバー絵かといえば、それだけ重要な作品だからですね。とてもとても沁みました。

 舞台は1962年のニューヨーク。主人公の青年は古道具屋で時代物の机を買ってきます。ブルックリンで取り壊し中の邸宅にあったものだ、と店の主人は言いました。青年は机の隠し引き出しに古い手紙を見つけます。開封してみると、ヘレンという女性が書いた、まだ見ぬ愛しい人への恋文でした。彼は返事を書き、ある方法で投函、それはヘレンに届きました。そして返信が別の隠し引き出しに入っていた…。

 と書いてしまうと荒唐無稽に感じますが、読了した方はラブストーリーの傑作、と全員一致ではないでしょうか。ラストは、非常に苦いですね、これ以外どうにもならないと頭ではわかっているのですが、せつなすぎます。主人公がジェイク(!)だから尚更ですねー。(ジェイクの新作情報を思い出したので貼り付けておきます、こちらです。アメフトの話なんですね。)

 近頃、さっぱり小説を読む気になれないのですが「愛の手紙」は例外、概要を知って、どうしても読みたくなりました。大好きな「ある日どこかで」に通じるものがありますね、時空を超えた愛です。原題の「The Love Letter 」もいいけれど、古風な話ゆえ(でもやっぱりSFというかファンタジー?)「愛の手紙」がふさわしいかも。永遠に忘れられない作品になりそうです。

 標題の「ゲイルズバーグの春を愛す」も読みましたが、なかなかです、古い街を愛するフィニイに親しみを覚えます。「愛の手紙」も62年という、ぎりぎり古いニューヨークの街並みが残っている時代だから成立したお話ではないでしょうか。彼の作品は映画化されたものも多いのですね、「インベージョン」は彼の「盗まれた町」の4度目(!)の映画化作品とか、見たくなってきましたー。

インベージョン DVD インベージョン

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2008/03/07
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駈込み訴え

文豪ナビ 太宰治 Book 文豪ナビ 太宰治

販売元:新潮社
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 北丸雄二さんが「太宰治をクイアする」という記事を書かれています。テキストはずばり「駈込み訴え」。この記事でも紹介しましたが、中学時代の私の愛読書です。

【「太宰が意識の上に恥ずかしげもなく引きずりだした愛」と記したのは、まさにそれこそが太宰文学の核心であるだろうからだ。(中略) ユダはキリストへの愛ばかりか、「ああ、ジェラシイというのは、なんてやりきれない悪徳だ」という述懐で自らの嫉妬妄想を、「ああ、もう、わからなくなりました」という混乱の自覚で恋愛妄想を、「逆にむらむら憤怒の念が炎を挙げて噴出したのだ」という解説で迫害妄想を、そしてこの小説最後の結語「私の名は、商人のユダ。へっへっ。イスカリオテのユダ」という場面の「へっへっ」に象徴される空恐ろしい自意識の自嘲で、自らの誇大妄想をも自覚しているのである。】

「ジーザス・クライスト・スーパースター」はキリスト教会から熾烈な非難を浴びたそうです。
キリストを「He's a man. He's just a man(ただの男)」と歌った「私はイエスがわからない」はこちらから。しかし、私がいちばん好きなシーンはキリストの39回の鞭打ち! です。「パッション」では、ただもう残酷で見てられませんでしたが、こっちのキリスト様のリアクションはどうにもこうにも色っぽい。初めて見た17歳(入試のために行った京都で・汗)のときから忘れられません。地獄行き必至? どうせ異教徒だもーん。

 脱線しましたが、「ジーザス…」は【全編、ユダの目をとおした悩める男キリストが焦点、
ユダは彼イエスを愛するがゆえに彼を裏切り銀貨30枚で彼を売り、そして最後に彼と口づけをしてのちに縊死するのである。キリスト教会は当時、マタイ伝26章49などで新約聖書にも記される劇中でのこの男同士の接吻にも異常な嫌悪感を示した(浅利慶太演出による日本の物マネ版ではユダとキリストとのキスは物マネの分さえも弁えずにおこがましくも割愛された)。】

 劇団四季バージョンでは、ほっぺにチュ! もカットですかい信じられない! やっぱり見る気がうせました。問題のキスシーンはこちら。すぐ出てきますのでお見逃しなく。

【朗々たる愛のクィアな確信犯である太宰を、どうして三島があれほどまでに毛嫌いしたか、川端が昔の「中学校の寄宿舎」を振り返るように眉を顰めたか、志賀が鼻糞でも丸めるように太宰を無視したかの理由の一つが見えてくる。

 それが見えたとき、日本文学もそしてまた、自分がクィアであると(クィアという言葉を知らなくとも)自覚している者と、自分がクィアであることを糊塗しようとする輩と、そしてその2つがどうしても理解できないストレートな道を勝手にうねりながら進む連中との3種類に、ぱたぱたと分類できてしまうのである。】

 三島がそんなに太宰を嫌っていたとは。その後、「クイア・ジャパン」(Vol.2)にも同様の記述を見つけました。太宰は「生まれてすみません」なんて書いてるしなー。中学の頃、太宰を読んでほっとしました、自分以外にもこんな弱い人間がいたんだ、と思えたから。

 北丸さんは「走れメロス」にも言及されてます。中学の教科書で知った話ですが、ラスト、確かにメロスは【(たとえ濁流を渡り山賊を蹴ちらしてきたにしても、だ)なんだか無意味に「まっぱだか」】なのですから、どうしてなんだろうなあ、と私は不思議に思ったことでした。非常に長い記事ですが、示唆に富んでいます。ご一読をお勧めします。

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草の花

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Book 草の花

著者:福永 武彦
販売元:新潮社
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Photo by (c)Tomo.Yun ;礼文島のエゾゴマナ)

「一人は一人だけの孤独を持ち、誰しもが鎖(とざ)された壁のこちら側に屈み込んで、己の孤独の重味を量っていたのだ。」

 いま読んでも心がふるえます。「草の花」にこの一節を見つけた夜、なかなか寝付けず涙が耳を伝い、枕を濡らしました。人は誰もが孤独なのだ、孤独はどうしようもなく人生につきまとうものなのだと識ってしまった私。15歳、高校1年の秋でした。

 その意味で「草の花」は忘れられない小説です。人生について深く考えさせられる名作ですが、実は腐女子の愛読書でもあるのですね。検索したら色々ヒット、やっぱりね。当時の私もそっちが目当てでこの本を買い、冒頭の文にガーンとやられてしまったのです。下心満々の小娘は文学の返り討ちに?

【藤木の眼、いつも僕の心を捕えて離さなかったのは、この黒い両(ふた)つの眼だ。】

 主人公、汐見の独白。

 あー、ダメダメ。この作品については「ずばり東京」みたく腐れモードになれませんね。書きながら思わずあちこち読み返しちゃって。

【僕にはそんな一時的なものとは思えないんです。と僕は少し声を大きくして言った。僕はこれが本当の愛、決して二度と繰り返されない愛だと思うんです。だからこそ僕は苦しんでいるんです。そんな、過渡的だなんて……。

 そう、言い過ぎだったら御免よ。それじゃ君の藤木に対する気持ちの中に、やましいものは何にもないわけなんだね?】

 汐見と春日さんの会話。

【だって仕方がないじゃないか、藤木。ぼくは苦しむように生まれついているんだ。

 それでも、僕のことでは苦しんでほしくないんです。

 愛していれば苦しくもなるよ、と僕は言った。】

 上記は当然、汐見と藤木の。「ああ月がでます。」のあたりはやっぱりいいなー。

 さっぱり分かりませんよね、すみません。じっくり読み直したくなりましたので、今日はこのへんで。結論は、私にはもうハードなシーンは要らない。名作はやっぱり名作だ、といったところでしょうか。

「草の花」というタイトルの出典は下記です。

人はみな草のごとく、その光栄はみな草の花の如し。
「ペテロ前書、第1章、24」

↓粗筋。

【研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐり合った藤木忍と、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、その儚く崩れやすい青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上を覆った冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。】

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