夏の嵐

夏の嵐 DVD 夏の嵐

販売元:紀伊國屋書店
発売日:2006/04/22
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 Mizumizuさんの「アン・リー監督はヴィスコンティアン? (続き)」という記事はBBMフリークにとってたまりません! ヴィスコンティの映画「夏の嵐」とBBMに、こんなに類似シーンがあるとは。一応ヴィスコンティは好きなんですが未見の作品も多く、「夏の嵐」もそのひとつでした。しかし、こんな事実を知ったら見ずにはいられません! いやー、ゴージャズな名作ですね、そしてイタリア独立運動の時代、とくれば「山猫」を思い出してしまいます、のめりこむようにして見ました。

 BS2で来月、「夏の嵐」の放映があるそうです。その情報もMizumizuさんから教えていただきました。ありがとうございます!

9/4 夏の嵐 午後1時から
9/5 ドキュメンタリー 午後1時から
9/5 白夜 午後2時から

 他にもヴィスコンティの長編デビュー作「郵便配達は2度ベルを鳴らす」など、9月のBS2は見逃せませんね。「揺れる大地」は学生時代、自主上映会(?)で見ました、なつかしー。当時はビデオもない時代、ロードショーや2番館以外で名作を見るチャンスは滅多になくて勇んで出かけたのを覚えています。

 さて、「夏の嵐」です。まず、Mizumizuさんの記事、そして私のこの記事も、映画を見てから読まれることをお勧めします。BBMとの類似シーンはなるほど確かにありました。リー監督がこの映画を見ていることは間違いないと私も確信。見ていて、非常にオペラ的な映画だと感じました。どこがどうとは上手くいえないのですが。冒頭にはオペラのシーンも出てきますし。

 そのオペラシーンですが、Wikipediaには「映画に使われた『イル・トロヴァトーレ』」として【筋書の荒唐無稽さなどから非常に「イタリア・オペラ的」作品と考えられており、多くの映画作品でとりあげられている。】とあり、「夏の嵐」も紹介されています。【Senso「夏の嵐」(1954年): ルキノ・ヴィスコンティ監督作品。1866年、オーストリア帝国支配下のヴェネツィアのフェニーチェ劇場で「見よ、恐ろしい炎を」が歌われた際、観客がその歌にイタリア独立・統一へのメッセージを読み取り暴動が発生する、というシーンが描かれている。 】

 BBMと似た点ですが、リヴィアがフランツを訪ねていくシーンの残酷さはジャックが離婚成立の報を受け、イニスに会いに行く場面とだぶりました。フランツは「(戦争中で危ないから)来るなと言ったのに」と、すっかり金目当てだったという正体を明かしてしまいます。この居直りは、離婚しても一緒に暮らせないと(口には出さなくても宣言したも同然)態度で示したイニスと似ているような。

 もちろんイニスはフランツと違って済まないと思っているのですが、「離婚成立」としか書いていない葉書を受け取ったらジャックがどう解釈するか? それを考える余裕はイニスにはなかったでしょうけどね。結局は娘たちとの時間を優先したのだし。

 そしてフランツは何故、リヴィアにあそこまで冷酷に接したのでしょう、リヴィアがああした行動に出るとは予想できなかったのでしょうか? 否、フランツはもう、人生に疲れきっていたのでは? とはいえ自殺する勇気もない、金が尽きるまで自堕落に暮らして後は野となれ山となれ? 誰かに引導を渡してもらいたかったのでは。リヴィアに「殺してくれ」と甘えてみたのかもしれません。穏便に済ませる方法はいくらでもあったはずなのに、あそこまですべてを暴露し、リヴィアを追い詰めるのは危険すぎる。むしろリヴィアに密告され、死にたいという欲望があったのでは、とふと思ったのでした。

 書きたいことは山ほどあるのですが、とりあえず今日はここまで。改めて書く元気が出てきたら、また書きますねー。

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ルードウィヒ

ルードウィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター DVD ルードウィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター

販売元:紀伊國屋書店
発売日:2006/07/29
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 だいぶ先の話だが、「ルードウィヒ」がリリースされる。今ならAmazonで予約価格22%オフ、これは買いですね。ボックス、単独盤ともに高価で迷っていたが、今度こそ! 

「週刊20世紀シネマ館」の1980年版にこの映画が載っており、いま見返してうっとりである。制作は72年、公開はその8年後なのだった。たぶん田舎で見たのだろう。上京するかどうかさんざん迷っていた頃だ。

 ルードウィヒⅡ世といえばノイシュヴァンシュタイン城。子供の頃、世界のお城のカレンダーが家にあったが、私を魅了したのがこの城だった。その時はあのルードウィヒが建てさせた城とは夢にも思わず。ただただ造形の美しさに見ほれていた。夢見るお城のイメージそのままだったから。

 ルードウィヒは生前の170日をこの城で過ごしたというが。たった170日! 死の真相は誰にも分からない。そして彼が唯一、心を許したのが従姉妹のシシィことオーストリア后妃のエリザベートだった。演じたロミー・シュナイダーの美しかったこと! ルードウィヒ役のヘルムート・バーガーと共に絶妙のキャスティングだった。

 ところで、ルードウィヒはゲイだったらしく。もちろんこの映画はゲイにも受けたようだが、NYではどこかの図書館(付属のホールだったか。とにかく劇場ではない)でしか公開されなかったらしい。89年に出た本「イタリアを丸焼き!」で読んだエピソード。公開は何故か平日で、当然のことゲイは仕事を休んで見に行ったらしい。

 こんなことからも、アメリカでのゲイ映画の扱いが(少なくとも80年代後半)分かるというものだが、当時は「アメリカはゲイに開放的な国に違いない」という誤った認識を持っていた私は、なんでこれほどの名作がそんな限定公開? と首を捻ったものだった。

 ぜんぜん感想になってませんが、DVDがリリースされたら、改めて書くことにいたします。

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD11248/index.html?flash=1

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山猫

山猫 イタリア語・完全復元版 DVD 山猫 イタリア語・完全復元版

販売元:紀伊國屋書店
発売日:2005/06/25
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2004年11月05日(金)

 赤茶けたシチリアの大地、サリーナ公爵家の門から邸宅へと映し出されていく冒頭だけで、胸がいっぱいになった、このヴィスコンティの稀有の名作を再度スクリーンで見られるという感激で。
 10年以上前に銀座で見たと覚えていたが、資料によれば、それは90年末。C.カルディナーレの、白いドレス姿の前売り券も残っている。
 その時は、埃っぽいやせた土地、バート・ランカスター演じるサリーナ公爵のワルツの優雅さ、ドロンとカルディナーレの美しさしか記憶にないのだが、今度はずいぶん違う。
 
 十数年の時を経て、私はそれだけサリーナ公爵の年に近づいた。パーティで胸を押さえ、ふと死を予感するシーン。その深みにも気づかなかった。美しい二人も、今は年老い、ランカスターはじめ他の主要キャストはほとんど逝去。
 そして何よりも私が実際に舞台となったシチリアに、ツアーで数日とはいえ、足を踏み入れた、2000年の年明けのことだ。

次々に諸国から侵略され、異文化が栄えたシチリア。ギリシャ神殿あり、スペイン風宮廷あり、イスラム風寺院あり。1度に色んな国に行った気分になれるのだ。観光客的にはお得な土地だが、シチリアにとってはそんな単純な話ではないのだろう。

「山猫」の舞台は1860年、イタリア統一前夜。シチリア王国は幕を閉じ、イタリア共和国の一部となる。サリーナ公爵も時代の流れに逆らおうとはしない。
 甥のタンクレディ(アラン・ドロン)と金満家の娘アンジェリカ(C.カルディナーレ)との結婚をおぜん立てしてやり、自分は忘れ去れたいのだという。私なら、そんなふうに言えるだろうか、忘れないでほしい、とあがくのではないか。

 しかし人は必ず滅びるもの、忘れ去られるのも必定だろう。
 こんなことを書きたいのではなかった、というか「山猫」に関しては書きたいことがいっぱいで考えがまとまらない。
 出演者だけでも、B.ランカスターは西部劇だけの人だと思ってたら堂々たる貴族を演じてアラン・ドロンも霞むほどだったし、何故かジュリアーノ・ジェンマも出てたし(赤い軍服が似合う)、公爵の長男パオロ、どこかで見たような、と思ったらピエール・クレマンティでビックリ、などなど。

 とにかく見られてよかった「山猫」なのであった。3時間6分、しんどくなかったといえば嘘になるが、いま再見できて本当に幸せであった。

山猫 Book 山猫

著者:ランペドゥーサ
販売元:河出書房新社
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2004年11月06日(土)

「山猫」を見ながら私の胸に渦巻いていたのは、サリーナ公爵を始めとするシチリア貴族の没落への予感であった。

 パレルモでは海辺のホテルに泊まったが、隣の敷地は豪壮な邸宅だったようだ。痛みが激しく、緑のネットがかけてあった。取り壊しも近いものと思われた。ネット越しにも見てとれるあまりの崩壊ぶりに胸が痛くなった。
 もとより廃墟大好きな私、こういった光景を目にすれば、なにか安らぎを感じるはずだった。形あるものは全て滅ぶ、そのことを廃墟や墓地は教えてくれるのだ。

 が、それにしても、あの邸宅(だったもの)の荒廃ぶりは傷ましすぎた。諸行無常とでもいおうか。何故、荒廃するかというとメンテナンスができない、手入れする召使をたくさん雇うことができなくなるからだ。
 そんな単純なことさえ思い至らなかったが、貴族の財力がなくなれば屋敷の維持どころではないのだ。塩野七生さんの映画エッセイ「人びとのかたち」を読んでようやくわかった。

 シチリアから戻って、あるシチリア名家の没落の記録を読んだ。たくさんの企業や工場を持っていたのが、次々と手放していく。陶器工場はジノリに売却したそうだ。宝石なども売却するがどうにもならない。一度崩壊を始めた屋敷を救えないのとどこか似ているような気がする。
 哀しみに満ちた島、というと感傷にすぎるのだろうか、シチリアは私にとってイタリアの中でも特別な土地だ。

 映画の舞台の1860年代から100年以上の年月が流れ、シチリアはサリーナ公爵が予言した通りになった、と塩野さんは書いている。誇り高い獅子や山猫に取って代わり、人の弱みにつけこんで私腹を肥すジャッカルがはびこっていると。

 何も変わらなかった、シチリアの人が変化を望まなかった、それが原因だろうか。一部の人は変革を目指しただろうが、それだけではダメなのだ、と公爵は明言していた。
「山猫」の原作者はシチリアの貴族で、祖父をモデルにこの小説1作だけを残した。生前は出版を断られ続け、死後に出版されるや、ベストセラーになったという。

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熊座の淡き星影

熊座の淡き星影 DVD 熊座の淡き星影

販売元:紀伊國屋書店
発売日:2006/06/24
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 冒頭から流れるフランクのピアノ曲「前奏曲、コラ-ルとフ-ガ」の重く甘く暗いメロディ。それはサンドラ(クラウディア・カルディナ-レ)の母の記憶につながる。アメリカ人の夫と共にヴォルテッラに向かうサンドラ。[VOLTERRA]の発音にうっとり聞きほれた。手持ちのビデオは英語字幕の上、画面が白っぽいと判読できず苦労したが、ヴィスコンティの映画にはやはりイタリア語が似合う。
 モノクロの画面に現れるのはかつてエトルリア文明が栄えたトスカ-ナの小さな町ヴォルテッラ。サンドラと弟のジャンニの故郷だ。サンドラは結婚後はじめて、実家でジャンニに会うのだ。演じたのはジャン・ソレル、いかにもヴィスコンティ好みの、ちょっとアラン・ドロンを思い出させる美形である。再会した姉を恋人のように抱きしめるジャンニ。さすがに唇は重ねないが、はたから見たらまるっきりラブシーンだ。

 二人の母はピアニストだったことが判明する。彼女はかつてユダヤ人の夫をゲシュタポに引き渡した疑惑が掛けられ愛人とともに孤立している。サンドラがヴォルテッラを訪れたのは科学者だった父の銅像の除幕式のためだが、フィレンツエェの父の親戚からは行けなくなった、と電報が届く。母のせいだ、とジャンニは薄ら笑いを浮かべる。
 繰り返される「前奏曲、コラールとフーガ」。悲劇は進行していく。ジャンニは姉にまだ執着しているのだ。地下の水辺での誘惑シーンはとろけそうに甘美だ。けれどサンドラは毅然として拒否。ここでのサンドラは男女が逆転して見えるほど強靱で野性的な美しさだ。物語は当然のように悲劇で終わる。

 ヴィスコンティ作品は、いつも豊饒な気持ちを味わわせてくれる。65年にヴェネツィアで金獅子賞を受賞。なのに日本公開は82年と遅れた「熊座の淡き星影」。手持ちのビデオは英語字幕。今まではBOXセットでしか発売されてなかったが、6月にやっと単発DVDが。これで日本語字幕のDVDを手元における、嬉しい!

以下、音楽の話もしておきたい。

「熊座の淡き星影」で全編に流れるフランクのピアノ曲「前奏曲、コラールとフーガ」。冒頭のパーティで流れたときから心惹かれたが、この渋さはドイツの作曲家だと思った。
 実はフランス人のフランクの作品だったのだが、彼はベルギーのドイツよりの町で生まれ、母もドイツ人、ドイツ系といってよい人らしい。
 この曲は、サンドラが故郷のヴォルテッラに向かう道のBGMにもなっている。フィレンツェから車で2時間ちょっと、トスカーナの町、れっきとしたイタリアなのだが、音楽のせいで異界に向かっているような気分を味あわされる。
 憂鬱な曲、なのかもしれない。私はすぐにCDを買い、のめりこむように聞いたが、次第にこの曲がサンドラと弟ジャンニの愛の葬送曲に聞こえてきた。
 
 行き場のない愛である。サンドラは既にアメリカ人のアンドリューと結婚、ジャンニとのことは吹っ切っている。姉弟の関係がどうであったのか、回想シーンはなく思い出が語られるだけ。
 ジャンニがアンドリューに町案内をするシーンがある。バルツェ(崖)へも連れていく。崩れやすい砂岩と粘土質の土でできた崖は長い年月の間に少しずつ崩壊し、いくつもの教会や修道院が呑みこまれていったそうだ。近くの僧院も放棄され廃屋になっているとか。
 風の強い夜に姉の夫を案内するジャンニ。「ヴォルテッラは死に怯える町」「僧たちは生き埋めになるのを怖れ、逃げ出した」

 気になるモチーフはいくつもあるが、とりわけサンドラとジャンニが言い争う部屋にあったクピド(アモル)とプシュケの像が忘れられない。
 クピドはプシュケと恋に落ち、けして自分の姿を見てはいけない、と夜の間だけプシュケの元に通う。
 カメラは口論する2人から、クピドとプシュケの像に向けられ、闇に守られた恋人たちをえんえんと映し出す。クピドの正体を知ったとき、愛は終るのだが、ジャンニの禁じられた恋に繋がる物語に思える。

 ジャンニはサンドラに拒絶され死を選ぶ、ここでもフランクの曲が流れている。
「熊座の…」は65年の作品だが、はじめて見たのは2年前。この曲は私には耳新しいものだ。けれど、生まれる前から知っていたようにしっくりとなじんでしまった。
 ヴィスコンティは、映像だけでなく豊かな音楽も提供してくれた、感謝あるのみ。

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ベニスに死す

ベニスに死す DVD ベニスに死す

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2006/02/10
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「エド・ウッド」以上にものすごい廉価盤が出るのですね、ひえー。

 ヴェネツィアに行ったとき、頭の中でしじゅう流れていた音楽があった。マーラーの第5番第4楽章アダージェット。言わずと知れた「ベニスに死す」の音楽である。
 暗く淀んだヴェネツィアの水面の映像に合わせて流れた、けだるく甘美な音楽。封切から3,4年してやっと見られて感激したが、何よりも音楽が気に入ったのを覚えている。中古のサントラレコードを買ったのに手放してしまったのが惜しまれる。「アダージェット」以外はぴんとこなかったのだ。
 ともあれ、「ベニスに死す」によってマーラーのあの音楽はずいぶんポピュラーになったのではないか。私は2度コンサートで聞いたが、特に15年ほど前のG.シノーポリ指揮ロイヤルフィルの演奏が忘れられない。この時はアダージェット=女性ヴァイオリニストの白い腕、だったけれど。アダージェットを奏でる陶器のごとく白い腕が網膜に焼き付いてしまった。
 川端康成の短編「片腕」をふと思い出す。片腕を一晩お貸ししてもいいわ、とのある娘の申し出に、「私」は娘の右腕をレインコートの胸に抱いて帰宅する…。

 ぜんぜん「ベニスに死す」の話にはいっていけないが、私にとっては、あまりのめりこめなかったヴィスコンティ作品なのだ。結局、あの一回しか見ていないし、レンタルででも再見しようという気にもならない。
 タジオ(ビョルン・アンドレセン)は確かに類稀な美少年だった。このような美と、どう出遭うのかが楽しみだった。ダーク・ボガード扮する音楽家アッシェンバッハは、彼を見ても動じないふうに見えた。が、新聞に目を戻した直後、もう一度、こっそりタジオを見つめなおす。「オスカー・ワイルド」の、ワイルドとボジーの出遭いの場面に匹敵する名シーンだ。
 が、どうもその後が…、アッシェンバッハの絶望的な片思いがつらかった、というわけでもないのだが。若作りの白塗りが汗ではがれていく醜悪さは印象に残っているけれど。
 アッシェンバッハは、コレラが流行り始めたヴェネツィアから離れなくては、と思いつつタジオのために動くことができない。そして破滅、いや幸福な死と呼ぶべきか。

 ヴェネツィアに、私はあまりいい印象を抱けなかった。映画の舞台リド島には行っていないが。本島はあまりに水に囲まれすぎていて不安なのだ。砂浜など存在せず、すぐ冠水する危うい街があるだけ。そして頭の中ではアダージェットが渦巻いていた。

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