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ブロークバック・マウンテン(359)

22 だいぶ前ですがアン・リー監督がインタビューで、BBMでいちばん辛い思いをしたのはアルマ、といった発言を読み、困ってしまいました。巷ではアルマがかわいそうという感想が幅をきかしていましたから、いやイニスとジャックだって辛かったんだから、といったところで、「でも夫の不倫の現場を見せ付けられて、それを誰にも言えず。イニスは稼ぎは悪いし」といくらでもアルマの方が辛い説を裏付ける事実は映画にも出てきて、どうすればいいの、と悩んだ私です。

【夫とジャックの関係を、気付いてないフリをし、 夫にサインを出しながらも報われない歳月は、どんなにつらかっただろう。離婚の際にもその件を持ち出さず、父を慕う娘達には最後まで 秘密にした態度は立派だと思う。 】

上記のようなアルマ擁護派の代表的な意見を拝読すると、いやあごもっとも、と白旗を揚げそうになるのですが、ちょっと待ってください! 「夫にサイン」とは、釣りに行くときに糸の先に手紙を結んだ件ですか? 見方によっては嫌味なことをする女、とも取れるのですが。大体、娘たちに言えますか、あんたたちのパパは男と浮気した、なんて。それにイニスガ激怒した、モンローとの相談デート(?)の件はどうなるんでしょう、あの意味がわからない人は多いと思います。私もコメントで教えていただき、確かにそうかもしれないと。でないとイニスの怒りが理解できません。アルマはちゃんと新たな選択への布石を打っていたのです。イニスと別れて、というかイニスを捨てて裕福な生活を手に入れられてよかったですね。

けれども、再婚してもアルマは、ちっとも幸せそうではありませんでした。娘たちは依然としてパパが大好き。特にアルマJr.はイニスに似ていて、アルマはカチンときたでしょう。Jr.がイニスとの同居を望んだとき、ママは私に辛く当たる、とはっきり言いました。娘たちをしっかり育て上げて立派なアルマ、との声も聞きましたが、アルマJr.はぐれたかったかもしれませんよ。でもパパを悲しませたくはないから耐えていたのではないでしょうか。モンローの家はいづらいので、さっさと出て行きたかったでしょう。結婚が早いのも頷けます。

さて、私は今は断言できます、確かにアルマがBBMでいちばん辛いキャラだと。ジャックよりもイニスよりも、です。なぜならアルマは変化できないから。いつまでたっても自己憐憫の塊だから。夫に裏切られた可哀想な私? でも、ちゃんと上手く立ち回って暮らしも楽になったのです。気持ちを切り替えて新しい生活を楽しんだらいいと思うのですが。イニスへのうらみつらみで一生を終える、わけではないでしょうが、どうもアルマとイニスの最後のエピソード(モンロー家での口論、そして飛び出していくイニス)には後味の悪さだけが残ります。

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コメント

こんにちは。

そういやありましたね、アルマ擁護(笑)。
しかし変わった映画でもあります。

この舞台のアルマの役割を、あらためて考えました。
上界と下界の一線をぶった切る現実主義者、モンローの台所のシーンでイニスの性癖を暴き、主人公に自覚を促す重要な箇所を担っていますね。

シーンでのイニスの怒りは自ら混乱しているようで、とてもじゃないが確信的に不倫を守り通す術を持たなかったことが読み取れます(と、しつこいようですが無自覚説)。

確信的に見ていたのは、観客とアルマ。イニスの性向を早々に断定し、不埒者とみなした観客ほど、アルマに共感する傾向にあったと思います。
しかし、アルマのもう一つの役割は、現実主義でもけして幸せを実感できない事、教えてくれます。

これは「後悔するな」という監督の示唆に表されていると思います。迷える人間は、周囲をも巻き込んで不幸にしてしまう。
ただし、アルマと対照的に非現実的なジャックという役割もしっかり用意されています。

生き様をまっとうすることは、抜き差しならぬ事。作品でのマイノリティとは、そういう装置だったのでないでしょうか?

投稿: 暖水魚 | 2010年6月18日 (金) 21時39分

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