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フィクサー

425michaelclayton

Book フィクサー シナリオ対訳

著者:トニー・ギルロイ
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 原題は「MICHAEL CLAYTON」、ジョージ・クルーニー演じる主人公の名です。40年も前に同じ「フィクサー」(もみ消し屋)もあったのですが未見です、舞台もぜんぜん違いますね。この邦題はわかり易くていいんじゃないでしょうか、本編にも出てきますし。そのもみ消し専門の弁護士が巨悪を弁護する側にとどまるのかどうか、に注目です。

 ジョージ・クルーニーの出演作ってはじめて、「ER」は見てましたが社会派だったのですね、て何をいまさらですが。今回は祝・ティルダ・スウィントン助演女優賞ゲット、ということで行ってきました。結果、ティルダはもちろん、ジョージにやられました! 浅野忠信さんに続いてノックアウトです、全くもって何をいまさらなんですが、こんなに存在感のある人だったんですねー、ジョージ。以前の作品も見なくては。

 あと、トム・ウィルキンソン(アーサー)が怖いくらいの迫力でした、こちらでは「怪演が光る」(かなり突っ込んだレビューです、後半部分は鑑賞後にどうぞ)と評されてます、確かに「怪演」の域に達してます。オスカーは逃しましたが、いや改めて見直しました。「オスカー・ワイルド」でワイルドの愛人ボウジー(ジュード・ロウ)の冷酷な父親役でしたが「私は詩を書いた。『私が死んだら火葬にしてくれ』」つう台詞が印象的、なんてことはどうでもいいのですが。ジョージも、これでオスカー獲れないんだ、今年は誰だったっけ、てダニエル・デイ・ルイスですー。

 主演の3人がこれだけの演技(オスカー・ノミネート&受賞も当然)を見せてくれるだけでスクリーンに火花が散るようで、たいへんな見ごたえ、BBMも3人ノミネートでしたが、やはり演技陣が秀逸だと引き込まれますね。マーティを演じた俳優もシブくていいわーと思ったらシドニー・ポラックじゃないですか、すばらしー。

 先ほど紹介のレビューには「善悪の境界線があいまいなグレーゾーンを描く」とありますが、ティルダ扮する大会社の主任顧問も「悪」に手を染めるときには激しく動揺します。マーティだって、この弁護が大企業の利益だけを守るものであることに葛藤してるはずですが。事務所の存続に関わるとなれば、ねえ。その辺が良くわかるだけに白黒はっきりつけたい人には向かない映画です。見ている側もお前はどうなんだ、と胸元にナイフを突きつけられているわけで。劇場内の空気も張り詰めていたように思います。

 エンド・クレジットに製作総指揮のアンソニー・ミンゲラの名が出て、しみじみしちゃいました。他にも大物がたくさん関わって、これが初監督のトニー・ギルロイを支えたんですね。今後が楽しみな監督の誕生です。既にオスカー・ノミネートされてます。

↓かっこいいですねー、ジョージ・クルーニー、もちろん音楽も良かったです。このバナーの下からネタバレとなります。

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*以下、ネタバレです

 ティルダの動揺演技はこっちまで不安になりました、冒頭の腋の下に汗びっしょり、は、彼女の意外な小心ぶりを見せ付けていますが、人ってあんなもんだろうなーと後で思いました。葛藤がないわけないんですよね、同じ悪を重ねていけば麻痺してしまうのかもしれないけど、まだその段階ではない。アーサーは上手く始末したけど、マイケルの場合は荒っぽいから殺人だとバレバレ~。

 ジョージ@マイケルの設定もよかったですね。裏稼業の失敗もありお金に困っているマイケル、一度はアーサーを8万ドルで「売る」のですが、彼の疑惑の死が、自分もねらわれたことではっきりと「他殺」だと知ります。それでもラストでは騙されかけました。向こうは自殺を装って人を簡単に殺せる連中です。「大金をもらって引退したい」は有る意味、本音だったのでは。しかし、馬たちをみかけて車から降りたことで命拾い。息子が読み、後にアーサーも読んだ赤い表紙の本に馬の挿絵がありましたが、あれを思い出したのか? アーサーのおかげで命拾いしたのかもしれませんね。

「お前は誰だ」と訊かれて「破壊神シバ」と応えますが、あれもアーサーが口にしていたような。同僚の死、そして自分も同じ目に合いかけたことで、マイケルは再生したのでしょうか。本当はもみ消し屋なんかではなく、まっとうな弁護士でいたかった、でももみ消しの才能が突出していたばかりに? 

「風にあたってくる」と外に出てタクシーに乗り、50ドルでいけるところまで、というのは何となくわかる気が。あれほどの大仕事をした後では一人でぼーっとしたくなるんでしょうか。次第に緊張が解けてうっすらと笑みが浮かんだところまでマイケルのアップが続きました。

 ラストのティルダとの対決を撮りたかったのでは、とどこかで読みましたが、あそこはどんなスリラーよりもはらはらしました、私はマイケルの交渉は無理はない、仕方ない、これでいいと思いました。突っ張りすぎて殺されることはない、お金もらって静かに暮らしなよ、と。ところが、でしたねー。

 というわけで納得のエンディングではあったのですが、今後、マイケルの同僚たちは失業だろうな、マイケル自身もどうなるのか、アーサーが精神に変調をきたすのも無理はないとか、あの主任顧問だって会社の安泰、保身は大事だけど良心の呵責も相当だったし、とあれこれ考えさせられる作品で、ずっしりと重いものが残りました。

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