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おれの墓で踊れ

おれの墓で踊れ Book おれの墓で踊れ

著者:エイダン チェンバーズ
販売元:徳間書店
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愛しき者よ、眠れる頭を
我が不貞なる腕に人らしく横たえよ、
物思いする子らの
ひとりひとりの美しさは
時と熱とに焼かれ、墓は
幼子のはかなさの証
されどこの腕に夜明けまで
生ける者は横たわれ、
死すべき身として、罪深く、
だが我には全てうるわしく

W.H.オーデン

  オーデンの「子守唄」です。「フォー・ウェディング」の例の詩を思い出しますね。作中で紹介(P190)されますが、他にもイギリス人になじみが深いであろう文学作品がいろいろ出てきます。第一部冒頭にはカート・ヴォネガットの含蓄のある言葉も。

【16歳の少年ハルが、「死んだ友人の墓を損壊した」という罪で逮捕された。だが「なぜそんなことを」という問いに、ハルは答えようとしない。深夜、18歳で死んだ友人バリーの墓で、ハルは何をしようとしていたのか。】

 上記Amazonの紹介で興味をもった方はたぶん期待を裏切られることはないと思います。これも「薔薇族」で知った本ですが、いわゆるヤングアダルト小説です(児童文学という紹介は誤解を招きそう)。80年代にヨーロッパ中の若者の心を捉え、今なお読み継がれているといいますが、読了してその理由が分かったような。心がひりひりする話ですが、どこか懐かしく甘い痛みを伴い、忘れがたいのです。きっとこれからも何度も思い出すでしょう。

 作者のエイダン・チェンバーズは教師、修道士を経て作家に。宗教的な記述もありますが抹香臭くはないです。チェンバーズは66年に「友人の墓を損壊したかどで逮捕された16歳の少年」の新聞記事を読み、すぐに2人の間で何があったのかわかった気がした、どうしてもそのことを書かなければと感じたそうです。

 ハルがダビデとヨナタンの愛が「女の愛にも勝るものであった」との聖書の記述(「サムエル記下」1章26節)を再発見するシーンはなかなかです。「一つだけ確かなことがあった。ダビデとヨナタンは心の友の原型。」(P62)「魔法の豆缶」も出てきます。<>に魅了された少年ハルの心の旅路に、ぜひ同行してみてください。

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