バベル
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バベル-オリジナル・サウンドトラック アーティスト:サントラ,チャベラ・バルガス,アース・ウィンド&ファイアー,ファットボーイ・スリム,小山田圭吾,坂本龍一,アマデオ・パセ,スケッチ・ショー,デヴィッド・シルヴィアン,コントロール・マチェテ |
上映も終わろうとする今になってやっと観ました。間に合ってよかったです、お勧めくださった方に感謝。その気になれなかったのは同じイニャリトウ監督の「アモーレス・ペロス」がいまいち趣味に合わなかったからですが。「バベル」はオープニング、闇の中の風の音(いかにも荒野に吹くような)から引き込まれ、映像に身をゆだねるうちにエンドクレジットになってました。
賛否が分かれるという点で去年のBBMを思い出させるとか。群像劇でもあり、「クラッシュ」に似てる? との声に不安でしたが、こちらの方がずっと秀作ですね。音楽がやたらといいのも当然、サンタオラヤさんでっせー、祝・オスカー2年連続受賞! 撮影はこれまたBBMでおなじみのプリエトさん! 日本では菊地凛子がオスカーにノミネートされたばかりに観なくてもいい人が見に行って理解できずにブーたれてんじゃないかと勝手に想像。ある程度、観客を選ぶ映画かもしれません。
映画館を出るときには、いいドラマを見た充実感に包まれてました。元旦に「リトル・ミス・サンシャイン」を見たときのような? 特に暗いとも思いませんでしたね、タイトルからしてハッピーエンドの大団円はありえないって判るじゃないですか、言語で分かたれた人間たちの話なんですから。ものすごーく暗い映画では、と覚悟して行ったのがよかった?
モロッコ、メキシコ、そして何故か東京。過酷な自然の外地に比べ、東京はこんなにも人工的な場所であったか、と、これがNYやLAなら却って違和感がなかったかもしれません、見慣れた景色と聞きなれた言語が外国映画の中で飛び交うのが、とっても奇妙な感じでした。普段、ぜんぜん関係のない場所と思いがちの土地と実はこのようにつながっているんですよ、て話ですか。日本とモロッコのリンクにはため息。結局、こういうつながり方しかできないの?
役者はそれぞれ良かったですね。話題の菊地さん、オスカー候補にならなくても注目したと思いますが、わりあい地味な役なのにきちんと見出され評価されて喜ばしい限りです。チエコの孤独が表情だけでなく全身からにじみ出てました。早くもハリウッド2作目が決まってるんですね。
大好きなケイト・ブランシェットは出番少なく「この役で自分にできることはあまりない」と疑問をぶつけたものの監督に説得された由。「サイレント映画に出てる気分だった」そうです。しかしそんな役だからこそ演技力が必要、久々にスクリーンで彼女を見たけど引き込まれました。「あるスキャンダルの覚え書き」、やはり見たいです。ブラピと夫婦役ってどんなもんか? でしたが意外や似合ってまして、特にブラピのくたびれ加減は大ヒット、この人、これからが役者としての本領発揮かもしれません。こんなブラピならもっと観たい。
メキシコでの場面は、監督のホームだけに一番いきいきと描かれてたような。エピソード的にも(始めは)明るいし。モロッコの話は~、だから銃を甘く見ちゃイカンよってことですか。きっとこの話がいちばん希望がないと思われるでしょうけど、「砂と霧の家」の救いのなさに比べたらどおってことないですよ、ハッハッハ、と力なく笑ってみたり。
公式ブログもあるんですね、これから楽しみに読みたいと思います。
いやー、本当に充実の時間を過ごすことができました。迷ってらっしゃる方、ぜひとも劇場に足を運ばれることをお勧めします。
*以下、ネタバレ全開です。
前半に力を入れすぎたせいか、そんなに書くことも?
日本編は、やはり菊地凛子に尽きますね。彼女の存在意義がわからないって声も聞きますが、言語によって分かたれた人間でも同じ言語ならコミュニケーションはとれるはず、しかし会話ができない者もいるわけで。手話もあるし、ゆっくり話せば通じるんですが。喧騒の街を歩いても無音、聴覚障害の世界を垣間見た気がします。
クラブで踊るチエコ。アルコールも入って高揚しているはずなのに、キスもしたのに、どんどん気持ちが醒めていく。その過程が表情だけでわかる。母の死はショックだったろうな、しかも死因がアレでは。日本には少数の銃のある家。田宮二郎の自殺を思い出しましたよ。
陰部を見せて気を引くチエコに日本の若者の異様さを感じたオジサン評論家もいたようだけど、あれはチエコのどうしようもない空虚さ、孤独がさせたこと。軽薄な男たちを嘲笑すると同時に自分をも嘲笑する。もっと自分を大事に、と言うのは簡単だけど、誰からも必要とされない自分をどうやって大事に思えっつーの、てな時期はきっと誰にでもあるから。あんな豪華な高層マンションに住んでいてもぜんぜん幸せじゃない、自殺した母もきっとそうだったんでしょう。
事前の情報はNewsWeekのシネマ特集を読んだくらいですが、「ひねりなき運命論」なるレビューはかなり辛口。「登場人物に深みが欠ける」って、それじゃ「クラッシュ」はどうなんでしょ、深みのあるキャラが1人でもいた? 「辻褄合わせだけ」の映画でした、私にとっては。メキシコとアメリカの国境地帯のシーンは「本来は過酷な運命に胸が痛むシーンなのだろうが、過剰な演出に悪態をつきたくなった」ってずいぶんですこと。べつに過酷な運命とも思わなかったけど。乳母のその後は(砂漠をよれよれになってさまようシーンも)確かに過酷でしたが。ライターはデービッド・アンセン? 覚えておこうっと。
モロッコの兄弟は受難でした。カインとアベルなんでしょうねえ。あからさまに悪い子の弟。姉ちゃんもあれじゃやばいぞ。お父さんもお母さんも気の毒に、と最後は小学生のような感想になってしまいました。
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コメント
びあんこさん、おじゃまします。
以前違う方のブログで、『クラッシュ』と『ブロークバック・
マウンテン』を比較しすぎておしかりを受けた経験があるので
すが(笑)。
この作品、なぜか『クラッシュ』を評価する方には不評のよう
です。ちなみにわたし、びあんこさんと同じく、『クラッシュ』
は評価できません。群像劇なら、ロバート・アルトマンの『ゴ
スフォード・パーク』のほうがはるかに上です。って、関係な
いですね。(>_<)
ケイト・ブランシェットはほとんど寝たきりですが、ブラピと
の少ない会話のシーンは、さすがのひとこと。動きが少ないか
らこそ、その存在感に圧倒されました。
この作品に出てくる人々を、「浅はか」としてしまうのは簡単
ですが、人間って、そんなに完璧じゃないし、コミュニケーシ
ョンって、そんなに簡単なものじゃないと思うんですよね。
でも、監督の真の狙いは、この作品を通して、「いい、わるい」
を人々に言わせること、さらに言えば、コミュニケーションさ
せることなのかも、なんて深読みしたりして。(^.^)
投稿: ラフマニノフ | 2007年6月 6日 (水) 16時39分