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ラヴェンダーの咲く庭で

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販売元:角川エンタテインメント
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 舞台は1936年、コーンウォール。海辺で暮らすジャネット(マギー・スミス)とアーシュラ(ジュディ・デンチ)の老姉妹。伯母の遺産で優雅な暮らしを送っている。きちんとした食器をつかった食事、お茶の時間。花咲く庭はため息の出る美しさ。

 ある嵐の翌朝。異国の青年が海岸に流れついたことで、姉妹の生活に異変が。それがアンドレア(ダニエル・ブリュール)。言葉は通じないが、次第に心を通わせていく。

★以下、ネタばれが含まれます。

 アンドレアを見たアーシュラは、彼に一目ぼれしたらしい。激しい動揺、もしかして生まれてはじめての恋なのか。

 しかし孫のような年齢の彼への思いが叶うはずもない。恋の経験があれば、それでも穏やかに彼と接していけただろう。思いがけず飛び込んできた小鳥の傷を癒し、元気で飛び立つまで面倒をみられる幸せ。が、あの年で初恋では。もしや悲惨な結末が、とふと不安になったのは事実だ。

 アーシュラは結婚歴のあるジャネットを詰る。「不公平だわ」。ジャネットは応える、「人生は不公平なものよ」。

 本当だ、だいいち、何をもって公平とするのか。誰もが愛する人と結ばれ添い遂げて天寿を全うできるわけではない。むしろそんなケースは奇蹟に近い。ジャネットの夫は戦死した。アーシュラは恋も知らずに生きてきた。そして突然、現れたアンドレア。

 ラジオからは刻々と開戦が近づくことをにおわせるきな臭いニュース。時々、アンドレアの心を奪うヴァイオリンの演奏。そしてアンドレア自身の才能を開花させるチャンスがやってくる。それはアーシュラには大変なダメージだった。小鳥は、飛び立った。医者にかかるのも嫌がるアーシュラ。その憔悴ぶりに胸が痛む。どうやって折り合いをつけるのか?

 しかしラストでは、アーシュラは見事に大人になる、手痛い失恋を経て。少女の初恋、失恋ならばこうはならない、成熟には時間がかかるから。しかしアーシュラはほとんど完璧に大人だった、ただ失恋の経験だけが足りなかった。人には失恋が必要なのだ、恋を失うという経験が絶対に要るのだ、と実感させられた。失恋は確かに哀しいが、得られるものも大きい。

 アンドレアと出会えたこと、一緒に過ごせた幸せへの感謝。そしてアンドレアの「救われた命を大事にします」という手紙。彼はけっして姉妹を裏切ったのではなかった。アンドレアの成功を喜び、祝福し、アーシュラは静かに立ち去る。これぞ大人の女性だ。大事な思い出の品をもアーシュラは潔く手放す、執着を断ち切るために。

 おとぎ話、確かにそうだろう。でも、「失恋の必要性」に気づかせてもらえ、私には大事な映画になった。村人と姉妹、アンドレアとの交流もよかった。2度と戻らない古き良き時代。

 ジュディ・デンチとマギー・スミスの演技の見事さは言うまでもない。特にディンチは前に見たのが「シッピング・ニュース」のしたたかな女性だったこともあり、本作では恋する老女の傷ましさ、かわいらしさ一途さが心に沁みた。

http://www.herald.co.jp/official/lavender/index.shtml

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コメント

かいろさん、こんにちは、こちらにもコメントありがとうございます。

>ジュディデンチが、どこから見ても‘好きな人の言動に一喜一憂する恋する乙女’

私も初めて見る彼女の乙女ぶりにたじろぎました、やはり大した女優さんなのですよね。
ダニエルくんもさぞ勉強になったことでしょう。

>恋に破れた時の彼女の心の痛みはそれはものすごかっただろうけど、この恋の結末はこれでよかったのだと

どうにもならない思いでしたよね。でも、それが望みうる最高の形で昇華されたように思えて、印象深い作品でした。

>世間は‘ピアノマン’(覚えていらっしゃいますか?)のことで持ちきりでございました。そのせいか映画を観に来ている人も多かったなあ~

あの頃の公開だったんですね、はいはい覚えてます、ピアノマン。期せずして最高の宣伝になったのですね。良い映画ですからどんなきっかけでも、たくさんの人に見てもらえて嬉しいです。

投稿: びあんこ | 2006年7月 2日 (日) 10時12分

びあんこさん、再びこんにちは。
『ラヴェンダーの咲く庭で』、大好きでした。いっつもふてぶてしかったり貫禄ばっちりだったりするジュディデンチが、どこから見ても‘好きな人の言動に一喜一憂する恋する乙女’だったのがとても印象的で・・・(で、泣いちゃうわたしです)。毎回同じことを書いている気がしますが、俳優さんて本当にすごいですね。しかしダニエルブリュールくんは緊張しただろうなあ、あんな大女優の片思いの相手だなんて。

例えばアーシュラがアンドレアと並んでもおかしくないような年齢で、運良く恋人になれたとしても、こんなにお互いの人生に深く影響を及ぼしあう関係になれたかどうか。恋に破れた時の彼女の心の痛みはそれはものすごかっただろうけど、この恋の結末はこれでよかったのだとわたしも思いました。

ちなみにこの映画が地元で公開されていたときはちょうど世間は‘ピアノマン’(覚えていらっしゃいますか?)のことで持ちきりでございました。そのせいか映画を観に来ている人も多かったなあ~。あら、長くなってしまいましたー、それではこの辺で。

投稿: かいろ | 2006年6月29日 (木) 23時36分

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