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星殺し

いま、危険な愛に目覚めて Book いま、危険な愛に目覚めて

著者:栗本 薫
販売元:集英社
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 小松左京といえば、「日本沈没」がリメイクされるんですか? その原作者として有名ですが、私はホラー小説の傑作「くだんのはは」の作者として、そして稀有の名作「星殺し」の作者として限りなく尊敬しています。↓「くだんのはは」感想。

http://emmanueltb.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_cbf3.html#comments

 さて、「星殺し」。「いま、危険な愛に目覚めて」に収録されてるんだから、やはり男同士の愛をテーマにした作品です。この本には川端康成、江戸川乱歩、司馬遼太郎(収録作「前髪の惣三郎」は映画「御法度」の原作)、筒井康隆、連城三紀彦など、そうそうたる執筆陣の短編が収められてます。そっち関係の小説の入門書としても最適。

 久々に読み返してみて、やはり「星殺し」は傑作だと唸りました。いわゆる耽美小説とは一線を画しています。主人公T.K.が実に男っぽい。彼はある目的のために地球そっくりの星にやってきますが、その目的とは。この星で消息を断った彼の思い人グスタフを探すこと。乗組員のチャーリーはT.K.を慕いますが、

「お前のようなガキは趣味じゃないんだ。もう15、年を取れよ。お前があと10センチ大きくなってもう30キロ目方が増えたら抱いてやるよ。」

 T.K.は成熟した大人の男。が、乗組員のドラからこう詰られます。

「あなた下品ね。ゴリラの方がもっと優雅。あなたは”美”や繊細さや生きてることの意味なんてこれっぽっちもわかってない」

 T.K.は思う。おれにもわかっていた時期があった。少年のときだ。だが、その時期は過ぎ、おれは女でも、若者でもない、ごつい、荒々しい存在になってしまった、と。

「女みたいにべたべたして胸クソが悪い星」(非常に特殊な事情あり)で、グスタフに何が起きたのかはぜひ本編を読んでいただくとして。最初に読んだときも、そして今も私を魅了するのはT.K.とグスタフの取っ組み合いの喧嘩シーンです。

 T.K.は何かのはずみにグスタフの股間をズボンの上から掴んでしまい、その後の殴りあいは「二人がいちゃつきあっているような奇妙なものに」なってしまった。

 グスタフはT.K.への思いを認めようとせず「あわてて」遠い星に調査に旅立った。いずれ自分への愛に気づくのは時間の問題、と思っていたT.K.は焦らずグスタフを待つことに決めたのですが。

 おれこそ君を愛していた、おれたちこそ真のカップルになれたはずなのだ。おれにとっての君、君にとってのおれ。これほどふさわしいもの同士がまたとあろうか?

 ラスト近くの「”男”の怒りはめちゃくちゃで不条理なものだ」は、やはり「BBM」を思い出させます。何度も書きましたが、今はなにを見ても聞いても「BBM」とつなげてしまうので。というか「BBM」を見なかったらこの小説を思い出しもしなかったでしょう。イニスとジャックの殴り合いをまた見たくなりました。

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コメント

しじみさん、こんにちは。こちらにもコメントありがとうございます。
「くだんのはは」「星殺し」もご存知なのですね、嬉しいです。

>小林少年と明智先生は怪しい

絶対に怪しいですよ!(爆)

>デイジーにデイジーが咲く

それですよー、うふふ。
「星殺し」、ご実家にあるといいですね。もしダメなら「いま、危険な愛に目覚めて」をゲットなさると、色んな作家の危ない短編がまとめて読めますよー。

投稿: びあんこ | 2006年5月 9日 (火) 14時54分

こんにちわ。娘が昼夜逆転して寝ているので、ゆっくりブログを見ています。いままでBBM関係しか見ていなかった・・・すみません。そうしたら、くだんのはは!!懐かしい。30年ぶりくらいに思い出しました。なんかこの話大好きだったんですよね~短い話なんですけど(変な人?)日本のオドロオドロした感じが好きでした。あと江戸川乱歩とか・・・小林少年と明智先生は怪しいとか思っていた根っからの腐女子でした。そして、星殺し?題名見てピンと来なかったのですが、デイジーにデイジーが咲くってやつですか?そこが印象的で・・・これも好きでした。いやほんとに懐かしいです。ここでこの話が出来るとはビックリです。実家に取ってあるかな?捨てたような?もう一度読みたくなりました。ないかな~

投稿: しじみ | 2006年5月 9日 (火) 13時06分

沙斗魔さん、こんにちは。
たくさんコメントありがとうございます♪
とりあえず、こちらに。

GWは普通に過ごしてます。私は在宅なんですが仕事が途切れがちで…プーに近いのです(汗)。どこに行っても人が多いし。昨日、森下洋子さんの「ジゼル」を見に行ったくらいで大人しくしてます。

「星殺し」、再読されたのですね。私は「いま危険な愛に目覚めて」(色んな作家の耽美短編集)でこの作品と出会えて幸せでした。小松さんの作品はそんなに読んでない(SF自体がなじみなくて)のですが、これは強烈でした。


>「気づいていながら自ら手放し、そして二度と取り戻せない愛」という点で「星殺し」は私にとってBBMの原点だったのではないかと

いやー、私も再読して「星殺し」は「BBM」だ、と強く感じました。というか「BBM」で「星殺し」を思い出したのですが。

「くだんのはは」も全く違うメッセージ性があり傑作ですよね。

>「くだんのはは」は今現在にこそ読まれるべき作品なのではないかと

本当ですよね。靖国参拝の前に、これ読んでよね、小泉さん! 本当に小松さんて大した作家だと思います。

コメント、心から感謝しております。他のコメントへのレスも明日にでも。もう飲み始めちゃったので。(笑)

投稿: びあんこ | 2006年5月 5日 (金) 19時49分

びあんこさん、こんにちわ。やっと本を探し出してコメント書かせていただけます。GWがなかったら来年になってしまったかもしれません。
実は、私昭和47年6月再販のハヤカワSF文庫の「星殺し」を持っているのですよ。表題作含め11作品が収められた小松さんの短編集です。「くだんのはは」が収められた本もありました。ハヤカワSFシリーズの小松さんの作品群は、時代的にまだ第二次大戦の影響が濃かったせいか戦争への凶兆をテーマにした作品が多かったように思えます。私は「くだんのはは」は今現在にこそ読まれるべき作品なのではないかと思っています。
て、「星殺し」へのコメントなんでした。失礼いたしました。
まさかBBM関連のサイトを探していて「星殺し」の記事に出会うとは全く予想外の驚きでしたが、栗本薫さん著で出版されていたとは更に驚きました。「いま危険な愛に目覚めて」って初期JUNEのキャッチでしたね。もう何もかも懐かしすぎることばかりです。
読んだ時は「グスタフ、何で行っちゃったんだよ~、T・Kと一緒に宇宙で活躍してほしかったよー」などと我がことのようにガッカリし、ついでにふざけた名前のユーリーが本気で憎らしくなったりいたしました。再読し、「気づいていながら自ら手放し、そして二度と取り戻せない愛」という点で「星殺し」は私にとってBBMの原点だったのではないかと思えるようになりました。
再読できる機会をくださったびあんこさんに感謝です。なんだかろくなコメントも書けずたいへん失礼いたしました。

投稿: 沙斗魔 | 2006年5月 5日 (金) 16時12分

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