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ジャーヘッド

ジャーヘッド-アメリカ海兵隊員の告白 Book ジャーヘッド-アメリカ海兵隊員の告白

著者:アンソニー・スオフォード
販売元:アスペクト
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 湾岸戦争、と聞いて思い出すのは96年6月、オランダの友人宅でのひととき。4時半には仕事を終え帰宅する男たち、白い鳥が遊ぶ運河沿いの庭にテーブルを出し、のんびりおしゃべりだ。手にはアムス・ビール(ノンアルコール・ビール)。暗くなるのは夜の9時過ぎ、平和な時間が続く。

 このアムス・ビールが湾岸戦争で米軍向けに飛ぶように売れたのだそうだ。アラブ方面は禁酒だから。アムス・ビールはノンアルコールにしては本物のようなコクがあり美味だった。「ジャーヘッド」を見て、なるほどこりゃ売れるわ、と納得。水分補給は必須の場所だし、禁酒ならなるべくビールに近い風味のがいいもんね。

 さてさて、「ジャーヘッド」。戦争映画は見ませんよ、なんだけどジェイクが出てるんじゃ仕方ない。「遠い空の向こうに」で親子役で共演したクリス・クーパー(けっこう好き♪)も出てるし~。かなり筋肉増強し別人のようなガタイで難役に挑むジェイク。マルコメ頭も見慣れると可愛いし、やっぱり藤原竜也に似てる瞬間が…くすくす。

 こりゃートンデモない映画だと冒頭から感じましたが。原作に忠実だとしたら湾岸戦争の実際はこうだったんだろうし。メガホンをとったのがまた、サム・メンデスときたもんだ。私にしては珍しく彼の全作品を見ている、といってもたったの3作目か。

 イギリス出身の彼は「アメリカン・ビューティー」「ロード・トゥ・パーデイション」といかにもアメリカ的な題材を選んでいるのだが、今回もずばりアメリカが関わった戦争というテーマに切り込んでいく。湾岸戦争。あのときの大統領もブッシュ(親父の方)だったのね、やれやれ。

 新入りの洗礼を受けたスオフォード(ジェイク)は次第に洗脳っていうんですか。「地獄の黙示録」を仲間と鑑賞して盛り上がる。これも私は未見だが、ヘリの編隊にBGMは「ワルキューレの飛行」とくれば、もうあの映画に間違いなし。こんなんで盛り上がるなよ、と思うけども。

 冒頭、入隊のときアジア系に見える端正な係官が気になった。「スオフォード。何系だ?」とか質問する。「ミッシング」にネイティブ・アメリカン役で出てた役者さんでは? けっこうお気に入りだったのだが。あの時は当然ロン毛、今回はジャーヘッド。どちらもお似合いでした。トロイ役のピーター・サースガードも良かった。

 と、前置きが長くなったけど、下のHPの先はネタばれだらけなのでご注意ください。

http://www.jarhead.jp/welcometothesuck.html

 さあ、何から書こうか。確かにスオフォードの仲間は誰も死なない。しかし殺しあうだけが戦争じゃない。湾岸戦争は、イラクが砲撃されるシーンはよくTVで流れたが、あまり流血の惨事は報道されなかった気がする。しかしスオフォード自身、狂気に近い場面もあった、ジェイクはこの役を生きて、さらに役者として大きくなったのではないか。火事騒ぎの翌日、仲間に銃を向けるジェイクは迫力がありすぎた。

 仲間の妻が不倫現場のビデオを送ってくる。「ディア・ハンター」のビデオとばかり思っていた彼は大ショックである。「これでおあいこ」と妻は吐き捨てるが、か弱い男にそんな仕打ちはイケマセン。男はもろい木のようなもの、ポッキーンといっちゃうわよ。それを狙ったのかもしれない、夫にどれほど恨みがあるか知らないけど、これはいけません。

 キレてるスオフォードも恋人から浮気をにおわせる手紙が届いたり、さんざんだ。砂を吐く夢はリアルすぎた。そして、明らかに民間の、避難民と思われる車の列が攻撃され、黒焦げの死体が散乱する中で嘔吐するのだ。彼らを攻撃する必要があったのか?

 狙撃兵として期待されたスオフォードが一発も撃たずに戦争は終わった、書いてしまえばそれまでだが、スオフォードには、それだけで済まされない重いものが残った。残ったどころか、「ぼくらはまだ砂漠にいる」のである。

 ジェイミー・フォックス演じる上官サイクス、彼のような職業軍人もまた実在するのだろう。毎日、海軍にいられることを神に感謝する? そういう神経でないと務まらない仕事だ。

 シネコンを出て、春のような陽気のみなとみらい地区、ランドマークタワーや大観覧車、帆船日本丸などを眺め、潮風を感じて歩きながら、これは現実なのか、とふと疑った。私はサイクスではない。炎を上げる油田群を見て、滅多に見られぬ光景、などと神に感謝する神経も持ち合わせていない。感謝するとしたら、この平和な世界に身をおける幸福をこそ。

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コメント

真紅さん、こんにちは。
レスが遅れて申し訳ありませんでした。

「ジャーヘッド」は苦手な戦争映画ではありますが、戦友がどんどん死んで、なんて展開ではないせいか再見できてよかったです。(公開時は1度でいいか、でしたがジェイク主演ですし。)
月末には「プルーフ・オブ・ライフ」もリリースされますし楽しみですね。

コメントTBは、そのうち再開するつもりです、ご心配をおかけしてすみません。
またそちらにも寄らせていただきますね。

投稿: びあんこ | 2006年8月 4日 (金) 12時58分

びあんこさん、こんにちは。以前の記事には今まで通り、というお言葉に甘えてTBさせていただきました。届いておりますでしょうか?
この作品、映画館で見逃し、レンタル初日に観たのですが、なかなか記事にできませんでした。
お忙しいとは存じますが、お時間あります折にまた拙宅へも遊びにいらして下さいね、息抜きに(笑)。
では、また改めてメールも送らせていただきます。ご自愛下さい。

投稿: 真紅 | 2006年7月31日 (月) 16時50分

エッタさん、こんにちは。
こちらにもコメントありがとうございます。
「ジャーヘッド」、スクリーンでご覧になったのですね。DVDもそろそろ出ますが、これもジェイク出てるし劇場で見られて良かったです。
あれから5ヶ月、あの時は2月なのに春の陽気で、外はみなとみらいの賑わいだし、砂漠とどっちが現実なのか、戸惑いました。

>戦争ものにつきもの(売りもの?)の殺戮シーンがなかったからでしょうか。

実戦で誰も死んでないですもんね。特異な戦争映画だと思います。ジェイクが狙撃するところを見ないで済んでよかったかも。

>大きなスクリーンで見る彼の瞳はやはり特別ですね。GG(グッド・ガール)のときにも感じたのですが、彼の内包する複雑さに目まいがしそうでした。

DVDが出たら、そのへんをじっくり味わいたいと思います。

>トロイ役の人。ちょっと心を持っていかれそうになってしまいました。

いまやジェイクの義兄のピーター・サースガードですね。数ヵ月後にはジェイクもおじさんになるのですね。

BBMの予告は私も結局、無縁に終わりそうです。「カサノバ」は4回も見たのに。


投稿: びあんこ | 2006年7月22日 (土) 10時07分

びあんこさん、再びこんばんはです。
行ってきました、下高井戸シネマ。見てきました、「ジャーヘッド」。

私も戦争映画はなるべく見ないようにしているくちですが、ジェイク君が出ているとなれば話は別。そんじょそこらの戦争映画とはひと味もふた味も違うんだろうと思っておりましたが、今まで見た(数は少ないけれど)どんな戦争ものとも違っていました。なぜなんでしょうね。戦争ものにつきもの(売りもの?)の殺戮シーンがなかったからでしょうか。

ファーストシーンがすごく面白くて私は思わず笑いそうになったのですが、誰も笑ってなかったので自重しました。あとジェイミー・フォックスのしゃべりが聞いているうちにHIPHOPというんですか?ラップのようでだんだん気持ちよくなってきて、「いけない、洗脳されそうだ」と思わず姿勢を正したのでした。そしてトロイ役の人。ちょっと心を持っていかれそうになってしまいました。

そんなことはともかくジェイク君。大きなスクリーンで見る彼の瞳はやはり特別ですね。GG(グッド・ガール)のときにも感じたのですが、彼の内包する複雑さに目まいがしそうでした。

ここにコメントをつけようとしてびあんこさんの書かれた記事を改めて読ませていただいて、なんだか感動してしまいました。これ以上何も言葉はみつかりません。

最後に一言。まだスクリーンでは見たことのないBBMの予告が見られるかなと泣く準備をして待ち構えていたのですが、私の野望が果たされることはありませんでした。

それでは失礼いたしました。

投稿: エッタ | 2006年7月22日 (土) 01時57分

栗本さん
コメント&TBありがとうございます。
TBだけで失礼しました、後ほどコメントしに参ります。

>湾岸戦争をネタにして、“ベトナム戦争映画”を撮ろうとしているところに猛烈な違和感

スオフォードは父がベトナム戦争に行ってて休暇で帰国したときに出来た子らしいですが。
ベトナム戦争映画は、ほとんど未見なのですが、今度何か見てみようと思います。

投稿: びあんこ | 2006年4月19日 (水) 07時04分

こんばんは。
TBありがとうございました。

今作は個人的には今ひとつの映画でした。
湾岸戦争は映画にしにくいのかなぁ~という感じで。
というより、湾岸戦争をネタにして、
“ベトナム戦争映画”を撮ろうとしているところに
猛烈な違和感を感じました。
サム・メンデスは好きな監督なんですけど・・・。
役者はおおむねよかったと思います。
ジェイクくんはいい眉毛してますね。
自分で抜いてんのかな?

投稿: 栗本 東樹 | 2006年4月18日 (火) 20時03分

bettyさん
私も「地獄の黙示録」、最後まで見たら戦闘意欲がどうなのか、と疑問でした。イイとこで召集がかかって上手い展開でしたね。

サンタ踊りで脳内麻痺…、くすくす。あれ、異様に似合ってましたね。きっと白日夢よ、と見なかったふりをしている私です~。

投稿: びあんこ | 2006年2月17日 (金) 19時28分

「地獄の黙示録」のビデオを観てるので私も、あれ~??とちょっとびっくり。
意気が上がるというより最後まで見たら意気消沈しちゃわないの~?と。
すると、やっぱりワーグナーの音楽と共にヘリががーっと飛んでくる空爆シーンを見せたところで画面が消えちゃって(^^;)
あらら~。
ドイツのナチ時代に帝国応援歌とされた曲には戦闘向きな脳内麻薬を出させる魔法があるんでしょうか・・(^^;)

という私はジェイクのサンタ・ダンスのところで別な脳内麻薬が出てしまったかも・・(爆)

投稿: betty | 2006年2月17日 (金) 15時37分

チュチュ姫さん
TBありがとうございます、こっちも貼り付けました。やってみれば簡単なのに。(汗)
これからガンガンTBさせていただきますね。
藤原竜也については、そちらにコメントしてまいりました。

投稿: びあんこ | 2006年2月17日 (金) 08時28分

誰ですか、藤原竜也って!

TBしますので、びあんこ姐さんも是非してください。

投稿: チュチュ姫 | 2006年2月17日 (金) 00時05分

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