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ヴィーナス氏

ヨーロッパのサロン―消滅した女性文化の頂点 Book ヨーロッパのサロン―消滅した女性文化の頂点

著者:ヴェレーナ・フォン・デア ハイデン‐リンシュ
販売元:法政大学出版局
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「ヴィーナス氏」はフランスのラシルドという女性作家の手による小説。1884年、出版されるや「世間の轟々たる非難が巻き起こり」、発禁処分に。しかしオスカー・ワイルド始め、一部の作家たちから熱狂的な支持を得ます。

「もし君が新たな悪徳を考え出したのなら、君は人類に恩恵を施したんだよ。」(ヴェルレーヌ)

「あなたの作品は天上の地獄だ。」(ユイスマンス)

 帯には「世紀末文学の異色作。若い貴族の娘と、極貧の美青年との倒錯した愛の世界。女が夫として、青年が妻として結婚する宿命的な愛を描く。」とあります。(人文書院1980年刊行)

 貴族の娘ラウルは夫としてふるまい、ジャックは妻としてラウルに従属し、そのことに喜びを覚えるという倒錯した生活。周囲の反対を押し切って結ばれた二人ですが、幸せは続かず、決闘騒ぎに巻き込まれたジャックは落命。

 と、ここまでなら私はこの話に深く思いいれることはなかったはず。問題は、この先のラウルの行動なのです。ラウルはジャックの蝋人形を作るのです。髪、まつ毛、歯、爪などは死体から取った本物。

「夜になると、喪服姿の女が、時には黒い服の若い男が」この部屋を訪れて、「蝋人形を抱きしめ、唇に接吻する。腹の内部に取り付けられたバネが口に連結していて、口を動かすのだ。」死してなお、ジャックへの執念を燃やす。愛と呼ぶにはあまりにグロテスク。

 こんな作品を書いたラシルド、本名マルグリット・ムーリエの半生も興味深いものでした。彼女がサロンに出入りしていたときの様子は、下記の「ヨーロッパのサロン」の解説に書かれています。かなり下の方になりますが。

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0474.html

 私は長いこと「ヴィーナス氏」の存在を忘れていました。それが、リンク「ブキミ大好き」にある「ラ・スペコラ」の蝋人形を見たことで記憶がよみがえりました。

 倉本四郎さんの「恋する画廊」、アマゾンMPに注文して翌日には届き、再読しましたが、この蝋人形について下記の記述があります。実にあの「内臓美人」の本質を表していると思います。

「蝋とりわけ蝋人形には、生命体ではないのに生命体であるような、人形とわかっていながら生きている人間であるかのような、一筋縄ではいかないリアリティが備わっている。」

 この「ヴィーナス氏」、かつて熱烈愛読した高橋たか子の訳、バレエ評論でおなじみの鈴木晶氏もアシストしたようです。とっくの昔に入手できなくなってます。

 幸い、復刊リクエストが出ておりますので、拙文でご興味をもたれた方、ぜひご協力をお願いします、私も既に一票を投じております。

http://www.fukkan.com/vote.php3?no=30708

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