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金のりんご

ケルト幻想物語 Book ケルト幻想物語

著者:W・B・イエイツ
販売元:筑摩書房
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「リボンの騎士」よりもっと前に私はルーツといえる絵本と出会っています。
 まだ小学校に入りたての頃、もしかして幼稚園? というのも悪い継母の顔をオレンジのクレヨンで塗りつぶしていたから。悪いやつめ、と思ったのでしょうね。
 それは中世のお話か、主人公は栗色の髪、紫の衣を着た王子でした。両脇にスリットの入った、チャイナドレスを短くしたような、中世の騎士がよく着ている衣装。
 彼は継母の后から難題をもちかけられます。「遠い国にある金のりんごを取ってきなさい。見つかるまで帰国は許しません」。
 お后は王子が戻るまで塔の上で待つと約束し、王子は仕方なく出発します。しかし当てのない旅。彼を助けたのは親切なお坊さん、王子に口のきける栗毛の馬をくれました。困ったときには必ず助けてくれるから、と。
 様々な困難を乗り越えて王子と馬は金のりんごのある国の門のそばに到着。と、馬はこれ以上一緒に行けないと。
 仕方なく中に入った王子は、やはり馬が気になり引き返しました。すると馬は死んでいる! 嘆く間もなく白い煙がもくもく。そこから現れたのは!
 
 王子様でした。
 濃い目の金髪に赤い衣のうるわしい王子様。彼は、金のりんごのある国の王子だったのです。
 誰かがここまで同行してくれなければ呪いはとけなかった、というわけで、お礼の金のりんごをもらった紫の王子は、大喜びで帰国。継母の后は驚いて塔から落ちて死んでしまい、めでたしめでたし。

 この話がもう好きで好きで、今でもそれぞれの絵が思い出せるほどです。亡くなった母后の紫の唇。悲しそうな王と王子。そして白煙の中で微笑む赤の衣の王子様。

 そう、王子様がふたり、なのです。だから私のルーツだって。
 他にありますか、こんな話。馬で旅したのが王女なら話は分かる。あるいは元の姿に戻ったのが王女ならば。でも、どちらも男性なのです。

 絵本はいつか失われました。何か原作があるはず、と調べたり人に聞いたりしたけど分からない。グリムじゃないの、と言う人もいたけど違った。気にしつつもどうにもならない、鮮明に覚えているあの挿絵だけで満足しよう、と思っていました。

 ある日、B5大の封筒が届きました。開封した私の驚きといったら! あの話が、「きんのりんご」の絵本のカラーコピーが出てきたのです。さる方が手持ちの絵本では、とわざわざコピーしてくださったのです。

 絵本の解説で原作もわかりました、ケルトの昔話でした。前に目次を調べた「ケルト幻想物語」に載っていた「コン・エーダの物語 あるいはエルン湖(ルツフ)の金の林檎」がそれでした。
 いったん手にしていたのに、「金の林檎」の前に「コン・エーダ」等、長たらしいフレーズがついていて見逃していたようです。
 こうして、私はあんなに憧れた物語の原作にたどり着くことができました。やっぱりトンデモない話でした。

 紫の衣の王子の名は、コン・エーダ。赤の衣の王子の名は出てきませんが、「想像しうる限り最も美しく最も高貴な若者」。
 はじめて人の姿でコン・エーダと相対した彼に、コン・エーダは固く抱きしめられ、「息の詰まるほど口づけをされ」る! 私、そこまで期待してなかった~♪
 
 三つ子の魂じゃないけど、5,6歳でこんな絵本に出会っていた私がゲイ的なるものに惹かれたのは当然の帰結、でしょうか。
 ちなみに絵本の挿絵は加藤まさを。あの「月の砂漠」の作者であり、叙情画を数多く手がけた方でした。
http://www.town.onjuku.chiba.jp/shisetsu/kinenkan/kinenkan.html
 

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