ブロークバック・マウンテン(200)

Nve00025_1  皆様、たくさんのコメントをありがとうございます。但し書きの通り、レスはお付けできませんが、それぞれに嬉しく拝読しております。正直、レスしなくていいととっても楽~。(汗)その分、記事に専念できますので…。

 さて。私、ぜんぜん存じませんでしたが、真紅さんから情報をいただきました、【ジェイクが、People誌の2006年ハリウッドにおける最もセクシーな15人に選ばれていますよ~。】とのことでHPを当たってみたのですが、よくわかりませんでした。とりあえずジェイクと愛犬たちをどうぞ。

 えー、いよいよというか何というか、BBMの200記事目でございます。

 今日の画像はこれまた決定的瞬間です。(199)の再会キスと同じくしかけたのはジャック。
 イニスはふてくされ体育座りで動かない。行動を促すのはいつもジャックなのです。

 ジャックのイニス「捕獲」、ここで時が止まればねえ。あちこちで「ここで時が…」と思ってしまうBBMですが、200記事目の画像はこれにしようと、ずっと前から決めていました。ジャックがこのままイニスを実家に連れ帰ってれば…?

 映画のオープニングは「オペラの序曲」とはリー監督の発言、この辺は(130)に書きましたので、よろしければどうぞ。私も再読してみて、こんなこと書いてたんか! もう書くことないわ。(笑)

 といいつつ今日も書くわけですが。私、8月に14回目のBBMを見た後、やっと「普遍的な愛」がわかった気がしました。

 私はやはりイニスなのです。というより誰もがイニスであり、誰にでもジャックがいる、そう思いました。
 ただ、その人にとってのジャックがいつ、どんな形で遣わされるかは個人差があるのです。出会ってすぐ意気投合、結ばれれば最高ですが、そんなケースは一握り。とっくに出会っていたのにそうと気づかず別れてしまい、「半身」「ソウルメイト」なんて言葉と無縁に死を迎える人も多そうです。
 中には出会う前に半身が世を去ってしまうケースもあるわけで。その場合はどう出会おうとしても無理です。(シビアすぎますか?・汗)

 誰もがイニスであり、誰にでもジャックがいる、それこそが「普遍的な愛」じゃないかと思ったわけです。イニスは前にも書いたように、ジャックがどれほど大事かジャックが死ぬまで気づくことができなかった。
 大事な人の存在を手遅れになる前に認められた、間に合った人もいる。でもそうでない人も多い、そういうことではないでしょうか。

 前に「人生は不公平、ジャックは死に、イニスは平穏な人生を送りそう」という意見があり、それに対してコメントしましたが、「半身」に気づくかないのも「不公平」に当たるのかもしれません。

 しかし公平な人生なんてないですよね。公平と言うのは「誰もが同じ」という意味で私は書いております。
 同じようにこの世に生を享けても、その後は各自の道を生きていきます。家族や財産に恵まれ、健康で長生きする人もいれば、その逆の人も。でも仕方ないことではないでしょうか。

 ジャックが此の世から消える前に、彼への愛にイニスは気づけなかったのですが、シャツのおかげで、イニスはジャックの大事さに気づくことができました。一緒に暮らし、一緒に年をとることはできませんでしたが、気づけないで終わるよりはずっとよかったのではないでしょうか。

 そしてジャックのママ。DVDを見て思うのは、やはりママはジャックの2枚重ねのシャツのことを知ってましたね。イニスに「部屋を見ていいのよ」と言ったのはシャツを見つけてきなさい、と言ったのと同じ。
 イニスが階段をきしませ階下に下りてくる音を、ママはどんな思いで聞いていたのか。ちゃんとシャツに気づいただろうか、そうでなければイニスを息子の特別な存在とは認められない、とでも?
 だから、シャツを手にイニスが戻ってきたのを見て、ママは満足そうにうなづき、袋を取り出しました、よかったー。

 9月18日、目黒シネマで15回目のBBMを見たのですが、目黒に向かう道すがら、私はふと思いました、「200記事でゲイ術ブログは休止しよう」。当時は200まで書けば気が済むと思っていたのですね。

 が、やはり人の気持ちは移り変わるもの。ちょうど2ヶ月たった今、環境も激変しましたが、まだまだBBMからquitできそうにないなー、というのが実感です。コメント受付も再開しちゃったし、というわけで、これからもBBMについて書いていきますので、よろしくお願いします。

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ブロークバック・マウンテン(199)

1144680738  都内のBBM上映情報です。浅草中央で11/28~12/4。HPの作品紹介がケッサクです。【色んな意味で男の魂揺さぶりまくりの感涙大河西部劇! ハンカチの用意を怠るな!(浅名アニキ)】。さすがは浅草。←どういう意味か判る人には判りますよね。(汗)
 池袋の新文芸座では12/24,25のみ上映と。BBMで涙のクリスマス、でしょうか。多分私はいけませんが、都合の付く方、ぜひおでかけくださいね。

 そして来年1月、アメリカでBrokeback Mountain: Collector's Editionのリリースが決まったそうです。特典映像は下記の通り。

A Groundbreaking Success
Impressions from the Film (Still Gallery)

On Being a Cowboy
Directing from the Heart: Ang Lee
From Script to Screen: Interviews with Larry McMurtry & Diana Ossana
Sharing the Story: The Making of Brokeback Mountain
Music from the Mountain

 赤字部分が新たな特典ですが、前回リリース版とそれほど違うのかどうか? コメンタリーやカットシーンに関して記載はないですよね? あと魅力的なのはポストカードがついている位でしょうか? A Groundbreaking Success…詳しい内容が早く知りたいですね。

 今日の画像ですが、「決定的瞬間」ですよね。これでジャックはイニスからquitできなくなりました。イニスも自分と同じように思っていると(幻想にしろ)分かってしまったから。少なくとも「久しぶりー」で握手して終わり、ではなかったのです。

 不安をかかえてやってきたジャック(ジェイクもヒースも指がきれいですねー♪)。
 思いがけず熱烈なキスの歓迎を受け、これは夢? とでもいいたげな瞳です。しかし次の瞬間、4年間、自分たちの思いが変わっていなかったことに自信を得て、自らイニスを求めていくのです。

 その後、つらい現実が待っているのですが、それでも再会できなかったよりはずっといいでしょう、という思いをこめて(196)の「ジャックは葉書を出さなかった編」(2)を書きました。
 ここで説明するのもなんですが、舅があの時点で亡くなっていたら、少なくとも4年後の再会はなかったのでは。イニスを思いながらも、生活はまあまあ、ボビーも可愛いし。

 イニスだって結婚して子供もいるだろう。ブロークバックでの事を「そんなこともあったな」で笑って終わりにされるくらいなら逢わないほうが…、と、これは実際には葉書を書いたジャックの懸念でもあったでしょうか。
 
 どちらの思いも同じ、ではもちろんなかったのですが。少なくともイニスはジャックとの人生など考えてはいなかった。確かなのは互いが互いにとっての「半身」だったこと。ジャックはそれを知っていた、「運命の相手」なんて言葉は使わなかったにせよ。

 テキサスの男(ランドール)と牧場をやると父に告げたのはイニスへの怒り、そしてついにイニスを諦める時がきたのだ、と自分に言い聞かせるため?

 ジャックは実家に戻ったとき、あのシャツを抱きしめて眠ったりしたんでしょうか。
 再会までは、シャツを心のよりどころにしてたんでしょうね。逢うべきか逢わざるべきか悩みながら眠りについた。
 ようやく逢いに行っても同居はNo Way、だったイニス。それでもいつかは、と。やがてイニスの離婚が成立しますが…。
 イニスの離婚以降は、シャツを見る目にも諦めの色が浮かんでいたでしょうか。
 それでも「別れよう」とは言えなかったジャック。逢瀬のたびに「次は×月に」なんて相談してたんでしょうか。最後の春のキャンプでは8月の予定が流れて、ああ~。

 別れを決めたにせよ、心は刻一刻と変わるもの。このままでもいいから、11月でもいいから、イニスに逢いたい。やっぱりquitなんてできない、ジャックはそんな心境だったのでは?

 どうにも半端な記事ですが、今日はお知らせしたい情報を最優先ということで。

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ブロークバック・マウンテン(198)

2006013111295493_1 皆様、コメント受付再開にたくさんのコメントをありがとうございます。エラソーなこと書いてしまって、これでコメントゼロだったら寂しいかも、なんて複雑な心境でおりましたが、喜んでいただけてよかったです。すてきなコメントをご紹介できるのは幸せなことです。

 ところで、ジャック・パランス氏が亡くなったとの情報を頂きました。記事はこちらです。やはり「シェーン」の悪役ガンマンが強烈な印象でしたね、ジェイクファンには「シティ・スリッカーズ」に出ていたかっこいい白髪のカウボーイ、の印象の方が強いでしょうか。心からご冥福をお祈りします。リバイバル上映で見た「シェーン」での黒のハットはしっかり覚えています。善玉シェーンが白のハット。とくればBBMのこのレビュー(Blog集に入れてますが)、じっくり再読したくなりました。

【スカパーのスター・チャンネルで2007年1月1日深夜にジャック・パランス氏の追悼放送として「シティ・スリッカーズ」が放映されます。】とご案内をいただきました、見られる環境の方は要チェック、10歳頃のジェイクが拝めます♪

 さて、本日はこの画像のシーンについてです。最初の30分は何も起こらないとされているBBM。イニスとジャックが関係を持つのが性急過ぎるといわれるBBM。そういった方々にぜひ聞いてみたいことがあります。

 このシーンを、貴方はどのように解釈されたのですか?

 ジャックがえんえんと煙草をふかし、向こうではイニスが体を洗っている。ジャックの内では「見たい…、でも見ちゃいけない」の葛藤が渦まいていたのは明らかだと思うのですが、性急派の皆さんの目にはどう映ったのでしょう? ジャックが煙草をふかしながらイモをむいてる、イニスは体を洗ってる、それだけですか? 男同士だからべつにこんなもん? 

 ジャックが生ツバ飲み込みそうに我慢して見ないようにしてるのが…やっぱり分からない人には分からないのでしょうか。他の抑制しすぎなシーンはともかく、ここはけっこう分かりやすく2人のこの時点での関係を描いてますよね。イニスも親しく口をきくようになり、ジャックはますますイニスに惹かれていき、同じテントに寝た夜、さわりっこしたくなったのも無理はないと思うのですが…?

 ある意味、BBMって「逆・裸の王様」です。ぴんとこなかった方には「最初の30分は何も起こらず、イニスとジャックは唐突に関係を結び、どちらも妻子を裏切ったサイテーの男」でおしまい、裸の王様しか見えていません。しかしBBMから豊かなものを得た私たちは、王様がまばゆい衣裳をまとい黄金の玉座につく神々しい姿、無数のお付や女官たちまでが見えます。私たち自身も王宮にいる気分ではないでしょうか?

(194)の画像のポスターにrevolutionary(革命的)という言葉があります。でも映画としてのBBMはオーソドックスなものだと思います。繊細に注意深くそれぞれのキャラを描いてはいるが特に目新しい表現はありません。原作文庫の解説にあるように【「あちら側」の人間ジャックは従来の通り「殺されなければならない」】。この点は【ハリウッドが同性愛を描く際のお約束だから、この映画のパターンはむしろ古典的。】と米塚氏は書かれています。(194)のポスターの右上にもHollywood Lovestoryとあって、この解説にも納得がいきます?

 真に革命的なのは【同性愛を誰にでも「起こる」可能性がある出来事として描いている点】とのことで、確かにこれこそが「ノーマル」(という言い方もゲイの方に失礼ですよね、反意語はアブノーマルですから。けっこう平気でこの言葉を使うレビュアーが多い)、いわゆるヘテロ・セクシュアル、非ゲイを戦々恐々とさせ、BBMを必要以上にhateさせた原因なのかもしれません。

 でも、BBMが凄いのは、やっぱり個々人の差別意識を抉り出した点でしょう。それについては(194)に書きましたが。あれから、ふと子供の頃のあぶり出し実験を思い出しました。みかんの汁で紙に字を書くと、そのままでは何も見えません。しかし火にかざすとあーら不思議、というアレです。

 BBMを「気持ち悪い」などという人は、このあぶり出しみたいなもので、見かけは白いきれいな紙ですが、差別の臭いがぷんぷんするのです。BBMフリークの怒りの炎でその紙に浮かび上がる文字は「私は差別主義者です」、なーんてね。

 でもBBMは実際、いろんなものを抉り出し、炙り出す怖い映画です。怖いけど見たい。よりぞーさんの記事を読んで、また見たくなりました、悲しくなっちゃうんですけどね。ハッピーエンドが見たい方は「ボーイ・ミーツ・ラブ」をご覧下さい。未見の方、激・オススメです。

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ブロークバック・マウンテン(197)

Bbm16100yq   先日来、画面を明るくしてDVDを見ておりますが、イニスが戻ってきた葉書を見るシーンで画面左端に電話ボックスが映っていると情報をいただきました。昨夜、私も確認。電話中に郵便局の星条旗がイニスの後ろに見えます。また、はるか以前にジャックに葉書を出して戻るときも、この電話ボックスがちらりと画面に。(涙)

 今日は(192)の続きでもないのですが、ジャックに続きイニスの苦しみのほうを。

 特典映像でリー監督の「シャツを見てはじめてイニスは自分たちが愛し合っていたことを知った」発言を聞いて、ああ確かにそうかもしれない。そしてイニスはその瞬間、どんなにショックだっただろう! もう何度も似たようなことを書いてきたかもしれませんが、改めて、イニスだって辛かったのだと書かせていただきます。

 2枚重ねのシャツを目にしてようやくジャックの、そして自分自身の思いの深さに気づいたイニス。気づくのが遅すぎたと絶望したことでしょう。本当に取り返しのつかないことですから。

 その人への愛に気づいたとき その人はもう此の世にいなかった

 辻邦生さんの「時の扉」の帯のキャッチです。これも何度か書きましたが、これを読んだとき哀しみに胸が詰まりました。後にそれが自分の身に起きたときの思いはとても言葉にはできませんし、イニスも同様の思いを味わったことと想像します。

 もう取り返しがつかない。その人への愛に気づかず、従って十分に思いを伝えられないまま此の世を去られてしまった。そんなとき、人はどうすればいいのでしょうか?

 だいぶ前に読んだレビューで、BBMを【恋愛映画としてみた場合、死で終わらせるのはイージーなのでは?】といったものがありました。イージーという表現はBBMにはそぐいませんよね。私はあっけにとられました。

 この人、よっぽど安い恋愛映画ばかり見てきたのかしら。というか私はBBMをもはや「恋愛映画」として捉えられないのです。「BBMという映画」、という見方しかできません。そのせいもあって違和感ありすぎです。この方の締めの言葉は、

【別れることも、一緒になることもできない苦しい岐路に立った時
それを死で終わらせるのは、あまりにも安直過ぎないかなぁ~~】

 どういう展開なら「安直」じゃないんでしょ?
 イニスとジャックが11月に会い、また同じような諍いになって、それを延々と繰り返していけばリアル? 

 大体、「死で『終わった』」とこの方は捉えてますよね。そりゃジャックは死にますが、その後もちゃんと描かれてます。葉書が戻ってきたときのイニスの口から漏れた、Ah、という声にならない声。電話の向こうから伝わってきたラリーンの悲しみ。ジャックの両親だって泣いたりわめいたりはしないけど、敢えて映像にしなかっただけのことで。

 安直なのはBBMを「死で終わらせた」という捉え方そのものじゃないでしょうか。
 どんな映画もどこかの時点で終わるわけですが。少なくともジャックの死は決して「終わり」ではないんですよ。残された当時者イニスはジャックを死者とは看做していない。心の中にジャックを住まわせ一緒に生きています。
 イニスはジャックのシャツに向かってI swear...と言ったけど、それは「死んでいなくなったジャック」にではなく「心で生きているジャック」への誓いだったはずです。

 そういう発想がわからない人には、死は終わりで安直、なんですかね。
 喪失と再生はセットで語られるべきだし、BBMにもそれはちゃんと描かれています。ジャックの死と引き換えにイニスはトラウマや思い込みから飛びたつための翼を得て再生、己のジャックへの愛を認め受け入れて、残りの人生をジャックと共に生きていく。

 イニスはまた誰かをジャックのように愛するかどうか? ジャックの存在が大きすぎて、私はそれはないと思いますね。それがジャックの呪縛なのかもしれませんが、一見、孤独に見える余生でも、イニスは「お前のせいでこんな人間に」とはもはや思わないでしょう。

 ジャックと巡り会えてイニスは幸せだった。ただ、ジャックへの愛を生きているうちに認められなかったのが悔やまれる。それだけのことです。取り返しのつくことではない、それはそれとして認めながらも、イニスは生涯かけて内なるジャックと対話を続けていくのでしょう。

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ブロークバック・マウンテン(196)

Normal_11  たいへんお待たせしました。本日は(122)に続き、「ジャックは葉書を出さなかった」編(2)をアップします。もう永遠に書けないんじゃないかと焦りましたが、なんとか~。私の独断と偏見による創作でございます、なんじゃこりゃ、と思った方もなにとぞご容赦ください。

☆もうひとつのBBM~「ジャックは葉書を出さなかった」編(2)

 父ははじめから私とジャックとの結婚に反対だった。しぶしぶ許したのは私が妊娠したためで、じゃじゃ馬娘が落ち着くのだから仕方がないと思ったのだろう。それに孫もできるわけだし。息子には恵まれなかったが、もしかしたら?

 生まれたのは待望の男の子だった。父はそれこそ目に入れても痛くないほど可愛がり、「ボビーは俺に似てるだろ」とジャックに確認して彼を辟易させた。

 実際、ボビーはジャックの息子である前に父の孫でありニューサム家の後継者なのだった。ジャックと父との溝はさらに深まった。私も気にはしていたが育児が忙しくそれどころではなかった。

 父はあっけなく世を去った。ボビーがまだ生後6ヶ月の頃だ。私は自分でも信じられないくらい取り乱した。あれほど反発してきた父なのに何故。
 抜け殻のようになった私を支えたのがジャックだった。父のビジネスを継ぐのが君の義務だしボビーもいる、しっかりしろと励ましてくれた。辛い時期を乗り越えて事業は順調に発展した。本当はセールスマンには向いていないのに、精一杯やってくれたジャックには心から感謝している。

 ジャックの息抜きはボビーを連れて実家に行くことくらいだったろうか。1週間、10日と父子がワイオミングを訪ねることを私は許した。私は父の死後もジャックの実家を訪ねる気にはならなかったが、ジャックもその方が気楽だったろう。
 
 一見、快活に見えるジャックだが、判らないところのある人だった。酔うと特にそう感じた。若いくせに「俺が死んだら火葬にして、遺灰はブロークバック・マウンテンに撒いてくれ」などと口走る。ブロークバックという山だって本当にあるのかどうか怪しいものだ。酔って妄想してるんじゃないだろうか。

 ある夜のこと。酔っ払ってソファで寝込んでしまったジャックに毛布をかけようとしたとき、ジャックがつぶやいた、「イニス」と。

 イニス? 昔の女の名前では、と眉をひそめた私は、ふと気づいた。イニスとは男の名だ。

 月日は流れ、ジャックは相変わらずボビーを連れてワイオミング通いを続けていた。たまに1人だけでふらっとどこかへ出かけることもあった。私は特には追求しなかったが時々、イニスとブロークバックの名を思い出してはいらついた。

 ジャックの悪い噂を聞いたのはボビーが15歳になったころだ。男同士でどうのこうの、と。私は耳を塞ぎたかった。またイニスという名を思い出し胸騒ぎがし、なんとかして頭からその名を追い出そうと無駄な努力を重ねた。

 それから間もなくだ、あの忌まわしい「事故」が起きたのは。39歳のジャックの命を奪ったタイヤ・アイアンの凶行。

 ジャックは希望通り火葬にされ、遺灰の半分はテキサスに埋葬された。残り半分は私とボビーが実家に持参した。私には初めて訪れるライトニング・フラット。

 ジャックの両親とはほとんど話すことはなかった。ブロークバックが確かにワイオミングに存在する山だということは義父から聞いた。私はジャックの遺言だけを彼に伝えた。
 部屋を見るか、と義母に勧められたのでジャックの部屋に上がってみた。なんとも侘しい、見知らぬ人の部屋に思えた。

 クローゼットの奥に2枚重ねのシャツをみつけたときの衝撃は忘れられない。なぜこんな秘密めいた仕舞いかたを? 青いシャツはたぶんジャックのだろう。その下のチェックのシャツは? 袖口の血は何を示すのか。

 またもやイニスという名が頭をかすめた。もしこのシャツとイニスが何らかの関係があるにせよ。それがどのようなものだったのか私には知る由もない。ただ、ジャックが血のついた2枚のシャツを隠し持っていた、その事実があるだけだ。

 若かったあの日、私は確かにジャックを愛した。いや愛したつもりだった。ジャックはどうだったのだろう? 年を追うごとにジャックの心は私から離れていったような気がする。別れることもできたのに、私はそうしなかった。そしてジャックも離婚を切り出しはしなかった。

 ジャックの死から20年以上が過ぎた。ボビーはもう30代後半、LA在住だ。テキサスの田舎と違ってのびのび暮らしているらしい。結婚したがらないのはジャックと私の結婚生活の影響だろうか。確かに手本になる夫婦ではなかったと思うけれど…。

 私も老いた。商売はとっくに人に譲り、チルドレスの片隅で、私はひっそりと生きている。

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ブロークバック・マウンテン(195)

2006012214074088 またまたジェイク情報からです。11/19の日曜洋画劇場は「40周年記念 デイ・アフター・トゥモロー 」だそうです。でも'05、ってウソですよね、BBMと同じ制作年って? 二ヶ国語、文字放送。40周年記念というからにはノーカット? どちらにせよ、楽しみですね♪ ヒース出演作の地上波放送は何度かありましたがー。

 次は【米国で民間のお化け屋敷の形を借りてキリスト教の教えに基づく世界観を広めようとする「ヘルハウス」(地獄の家)が静かな広がりをみせている、との新聞記事】をご紹介いただきました。アメリカってヘンな国だなあ、という思いがまた強まりました。

 BBM以前は私、アメリカにほんとに興味がなかったです、徹底したヨーロッパ志向でしたから。アメリカ映画はたまに見てたけど非アメリカ人監督の作品が多かったような。BBMも厳密にいうとアメリカ映画じゃないのかもしれませんね?

もっともっとアメリカ Book もっともっとアメリカ

著者:落合 信彦
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 先日この本を読んだのですが、第6章「宗教のコンビニエンス・ストア」がとても面白かったです。キャッチも「テレビ伝道師がモラルのバーゲンセールをする世界最大の”宗教国家”」と傑作です。ヘルハウスの記事もまさに「モラルのバーゲンセール、あるいはモラルの見世物小屋化」を示しているような。

 この本でようやくアメリカのプロテスタントの実態がなんとなく分かりました。ざっと紹介しますね。

【本流】は英国国教会派、スコットランド長老派系、クエーカー派など東部の英国系社会を中心に根を張った。

【2大宗派】バプティスト、メソジスト。イニスはメソジストでしたね。彼自身が信じていたかどうかは別として。英国国教会派から分離した宗教だそうです。

 BBMにSMUという大学が出てきたように記憶してますが。ラショーンの台詞です。これはテキサスにあるサザン・メソジスト大学でしょうか? フットボールの名門だとこの章に書いてあります。

【アメリカ生まれの新興宗教】キリストの弟子、モルモン、クリスチャン・サイエンス、エホバの証人、救世軍(NJWindowさんからコメントいただきました、イギリスが発祥ではないかと。調べてみたら確かにそうでした。単行本を経て文庫になっているのに指摘されなかったものと見えます、というか気づけよ自分、ですよね。たいへん失礼致しました。11月22日:追記)など。モルモンはBBMとも深い関わりが。(笑)

「TV説法」については書く気になれませんので、ご興味ある方は「もっともっとアメリカ」をどうぞ。10年以上前に書かれた本ですが、まあまあ役にたつのでは。

神曲〈1〉地獄篇 Book 神曲〈1〉地獄篇

著者:ダンテ アリギエーリ
販売元:集英社
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 でも記事のヘルハウスはそれなりに面白そうですね、特に舞台版の方は。情報をお寄せくださった方は、【地獄のほうが面白そう。心の狭い、狂信的な人たちが集う天国より、地獄の方がよっぽど楽しそうです。きっと、イニスとジャックもいるしね。】

 私も地獄行きが楽しみになってきました。メールでダンテの神曲「地獄篇」の話も出たのですが、確かにバラエティに富んでなにやらテーマパーク風? 天国篇も読んだはずなのに全然、記憶にないです。つまんなかったのね、きっと。概略はこちらから

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ブロークバック・マウンテン(194)

Brokeback50 BBMのポスターでございます。CDジャケットにも使われた写真、イニスもジャックも楽しそうですね、ここで時間が止まればー、なんていつも思ってしまいます。

 ジェイムズ・シェイマスが現在Focus Featuresを率いているようなのですが、ラインナップはなかなかの秀作揃い、感心しております。もちろん最高に成功したのがBBMなわけですが。

 DVDの特典映像を見ていてシェイマス氏(蝶ネクタイで親しみやすい感じのオジサマ)が、とにかくBBMの映画化権を取れて嬉しかった、と語るのが印象的でした。リー監督との付き合いが長い彼のこと、これはもう絶対アンちゃんに撮らせたい、と思ったに違いありません。

 リー監督もBBMを撮れて嬉しいとよく言ってますよね。難しいテーマの映画で、興行的な影響は気にならなかったのかと聞かれても、低予算映画だしねえ、とあっけらかんとしていて、インタビュアーが困惑してるような? 制作費が回収できればOKって感じだったんでしょうか。

 このBBM Cast Interviewsでのヒースの発言も注目です。アメリカはready(BBMを受け入れる準備が整っているか?)の質問にI don't care.(どうでもいい)と言ってますね。そして「Nobody's business but theirs.」(彼らの問題だから)と、どっかで聞いたような台詞を。ジェイクはしじゅう出演できたのは誇りだと言ってるし、そういう映画なんですね。ヒットしようがしまいが関係なかった。制作側は作る事に意義があり、出演者も出られて誇りに思うと。

 この映像のコメント(上から2番目)には、I think it's important when you make a movie to think about the main target group.(映画を作るときにはターゲットとする層を考えないと)とごく当然のことが書いてありますが、BBMは「べつにいーんじゃない、そんなの?」って感じで作られたようですね。とにかく世に出すことに意義があるってことで。それが意外な反響を呼び、関係者がいちばん驚いている、というところでしょうか。

 そして実に様々な感想が見受けられるBBMですが、不寛容な意見にはかたくなさと同時に差別的な意識がからんでいると思うのです。それに関連したメールをいただいたので考えこんでしまいました。

 日本にはピラミッド式に差別の構造があるそうですが、一般家庭を考えてみても、差別といわないまでもストレス発散には、こんな図式がありそうです。

 パパ、会社で上司に叱られる→家でママに八つ当たり→ママは子供に小言→子供は学校でいじめ。あまりに短絡かもしれませんが。

 私はかつて、あまり人聞きのよくない仕事をしてまして、先輩は「僕らは不可触賤民、アンタッチャブル」と自虐的に言ってました。ある日、職場のビルのエレベーターでのこと。別会社の男性が、私がウチのフロアの階のボタンを押したとたん、すごい目で私を見たのです。差別まるだしの目でした。

 私はもうおかしくておかしくて。あー、やっぱり私らはアンタッチャブルなんだ。そしてこんな仕事をしてる人間ならこんな目で見てもいいのだ、とこの男性は思っているのね。なんてわかりやすいんだろう。そして、なんて怖いことだろう。

 あの男性は生業で人を差別しました。そして自分がそういう人間であるということを、私にあからさまに示しました。その怖さがわかってないのが凄いです。もし私が彼なら、たとえ、この女、あんな会社で働いてるのかと見下しても顔には出しません、差別的な人間だとばれるのはイヤですから。

 脱線しましたが、BBMを見て「気持ち悪い」「生理的に受け付けない」と誰でも閲覧できるブログに書くのはどういう神経なのでしょうね。私もかつて「今までこんな気持ち悪い映画を見たことがない」という感想を読み、その人がアフィリエイトをやってる(つーかアフィリのブログに映画の感想も書いてた)のを知り、絶対にこんな人のブログから買い物するもんか! と。私が彼なら売り上げを考慮してもう少しソフトに書きますがねえ。

 思うに、挫折を知らない「強い」人は一般的に冷たいのでは? 高樹のぶ子さんの小説、「光抱く友よ」に「強い人って冷たい」という台詞があり、当時はぴんときませんでした。自分では強いつもりでしたが、冷たいつもりもなく。でも今思うと、やはりその頃の私は冷たかったです。今は挫折や喪失を知り、その分、人の気持ちを考えられるつもりですが。(汗)

 結局、想像力の問題なんでしょうか。子供は経験不足がゆえに平気でいじめをやるのかもしれません。長じて反省し、「いじめられる辛さ」を想像し、または経験して人の気持ちを考えられる人間になればいいのですが。昨今の世情を見ていると大人の方が問題ありそう。虐待も多いですよね。少子化問題より、せっかく生まれてきた子供たちが虐待で殺されないよう、きちんと見守ってほしい。

【ゲイの方の
「同性愛っていけないことなんだろうか。なんで同じ人なのにちょっと違うだけで残酷なことをしてしまうんだろう。」
 という文章を読んで、泣けてきました。】

 メールのその部分を読んで私も涙。セクシュアル・マイノリティは、みんなこんな思いをかかえているのでしょうね。1度も悩まずゲイです、と明言できた人は皆無でしょう。私なんぞゲイの存在を知ったのは11歳のときで、そのときから好感をもっていたので、ゲイを知らない時代より知ってからの人生のほうが何倍も長くて。「同性愛がいけない」なんて思ったことないですから。

 しかしBBMのテーマっていろいろ論議されてますが、「自分が差別的かどうか抉り出す映画」の要素がいちばん強烈かもしれません。「自分も差別的かもしれない、でもイニスとジャックが愛しいのだから、せめて今後は差別意識に敏感になろう」といった人はともかく、「気持ち悪い」で終わってしまう人は、ちょっと自分を振り返ってみたほうがいいかも。

 まあ、べつに振り返る必要はないですけどね。せいぜい私が「この人は人の気持ちがわからない差別主義者なんだな。そしてそのことをブログを通じて全世界に発表して恥じない人間なんだな」と感じるだけのことですから。

 文章には書いた人の全てが現れることだけは肝に銘じていただきたいですね。と、これは自戒をこめて。

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ブロークバック・マウンテン(193)

Brokebackmountain_24 本日はジェイク関連の情報あれこれと雑談ですー。

 まずGetty Imagesに10/16の画像がアップされてます、とだいぶ前に情報をいただきました。ランスと一緒ですね。お知らせが遅れるうちに19日の画像も。こちらはカジュアル、ジェイクIn NYです。秋って感じですねー。

 お次は悲しい話題、ジェイクのナレーター作品がYouTubeで見られなくなってます。期間限定だったのか、でも少しの間でも視聴できてよかったです、皆さんにも喜んでもらえましたし。少しだけ書き取りもしました、そのノートを開いて読んでみると、ジェイクのあのやさしい声が聞こえてきそうです。

 こちらはジェイクの新作Renditionの続報です。ピーター・サースガードが新たに出演者リストに。「ジャーヘッド」に続いての共演ですね、ますます楽しみ!

 続いてケーブルTV情報です。
「遠い空の向こうに」がケーブルTVの「ムービープラス」チャンネルで放映されます。
 未見の方に、ぜひご覧くださいね。放映時間は下記の通りです。

11/11(土) 08:45~
  16(木) 10:45~
  21(火) 03:45~
  26(日) 21:00~
  30(木) 06:15~

 そして、今日の画像のシーンで流れた音楽(サントラCDには未収録?)と良く似た音楽が「21グラム」のサントラにあるそうです。作曲が同じグスターボ・サンタオラヤなんですね。イニスがどんよりと放牧地に向かうシーンの音楽も同作品のサントラと似てると、どこかで目にしたような。試聴はここの3曲目をどうぞ。確かに似てますね。

 最後に、皆さんPBSってご存じですか? Post Brokeback Syndromeの略なんだそうです。下記は情報をくださった方のコメント。

【BBMを見て、はまった人がなる病気? I go to see doctor and I said I’m PBS(Post Brokeback Syndrome) これって不治の病かも。】

 不治の病…、私も間違いなく高山病というかBBM病ですが、きっとPBS患者でもあるんでしょう。こんな記事(英語)もあります。PBSというよりBBM病を治すには下山するしかない、といった内容ですかね?

 以上、悲喜こもごもの情報を終わります。

 いよいよ本題の雑談(笑)ですが。なんてことないんです、やっと画質調整して初夜のテントシーンを見ました、というだけの話。TVのリモコンで画質調整ができるはずが反応がない。ま、いっか、と真っ暗で何も見えないテント内はいつもすっとばしていたんですが。リモコンをよくよく見たらDVDモードになってました、あはは。実は電源のオンオフもリモコンでできなくなってて、1年半でもう壊れたか、と思ったら。(汗)

 単純ミスに気づき、いよいよ画質調整に挑んだのが一昨日。画面をどんどん明るくしていくと、あーら、くっきりはっきりのテント内。こんなに見えなくてもいいわー、キャーとか言いながら更に明るくして…、すっきりストレス解消♪ DVDのレビューの中には「真っ暗で何も見えないDVDを売りつけて」と怒りの声がありましたが、やはり画質調整で見えるのですね、うふ。

 で、2日目の例の糸引きキスも、やっとやっと確認できました、今頃! 今日の画像はあまりに真っ赤なのですが、画質調整の話題なので使ってみました、なんてね。

 ついでですが、イニスが郵便局でYou bet.の葉書を書くシーン。郵便局内でイニスが台に向かって立ってるのが外から見えるんですね、今までぜーんぜん気づきませんでした。やはり画面を明るくした効果でしょう。明るくした結果、他のシーンでも調度品とかイニス宅の乱雑具合とか、さらにさらにはっきり見えて、そんなの見えなくたっていいんですが、これもDVDの楽しみのひとつかと。また何か発見があるといいなあー。

 本編は悲しくて何度も見る気にならないのですが、メイキング等の特典を見ていると、やっぱり見たい、となります。特典→本編→特典、と交互に見ると、あまり悲しくならずに済むのかもしれませんね?

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ブロークバック・マウンテン(192)

18 「ジャックの死の真相」についてどのようにお考えですか、とご質問を頂きました。その方同様、私もジャックは殺されたと思っておりますが、事故だと信じている方もいらっしゃる由。
 事故だとしたら、ずいぶんフォビア殺人を匂わせる死因ですよね。イニスは「タイヤ・アイアン」と聞いただけでぴんときてました。

 原作者のプルーが「イニスとジャック、こんな辛い目にあわせてごめんなさい」と言ったとか聞きますが、その中にはジャックの死因も含まれるのではないでしょうか。

 映画ではイニスの想像としてずばりの現場が出てきます。ラリーンの電話での説明で「タイヤ・アイアン」が出てきたとき。
 原作では、ラリーンが「事故で」といったとき、イニスは違う、と考えていますし、ジャックの実家では牧場の男の話をジャックの父から聞いて「やっぱりタイヤアイアンだったわけだ」と。
 プルーはBBMについて「愛の物語ではない、アメリカの地方のゲイフォビアの激しさについての物語だ」と語ったそうで、私は日本での公開前にそのことを知り、けっこうなショックを受けたものです。

 真実は闇の中、なのですが、死因よりも私は、ジャックが命を絶たれた、何ら希望を叶えられずに世を去った、そのことが傷ましくてなりません。
 命と引き換えにイニスを目覚めさせることはできたにせよ、イニスと牧場をもちたいという望みは潰えました。
 
 ジャックの思いを受け入れられなかったイニス。男同士で暮らしたりしたら命がない、と怖気づいたイニス。
 死んだのは己のセクシュアリティに忠実であろうとしたジャック。生き残ったのはそうしなかったイニスでした。

 イニスは生涯かけて、その意味を考えなければなりません。何故自分でなくジャックが死んだか。何のために自分は生き残ったのか。此の世にいないジャックと向き合い、対話していく中で答えはみつかるのでしょうか。

 それにしてもジャックはどんなに辛かったかと思います。何もかもうまくいかなくて、高い壁に囲まれた闇に取り残されたような気がしていたでしょう。
 4年後に再会しますが、ジャックはたぶん忘れられるものならイニスを忘れたかったんですよね。
 結婚して地道に暮らしているだろうイニスと会ってどうなる? 金目当てといいながらラリーンとの間に息子もできたし。が、舅がいけすかない。営業の仕事だってジャックに向いていたかどうか。相当、無理していたのでは?

「早く自分の牧場を持ちたい」
 イニスと親しくなる前にそう言っていたジャック。それはやがて「イニスと牧場をやりたい」に変わっていきました。再会時のキャンプで具体的な夢を語るジャック。あっさり拒否したイニス。当時からのすれ違いは、離婚時、決定的になります。イニスは自分と、男と同居するなんてあり得ないのだ、とジャックは思い知るのです。

 今日の画像は、ジャックのうつろな目に映る闇。イニスとの決定的なずれに気づいてしまった絶望。イニス似の男娼(しつこいですがBBMの撮影監督)と泥のような闇に消えていく場面は何度見ても…。

 その対極にあるのが回想シーンでのdozy embrace、まどろみながらの抱擁。私も泣きたくなるほど(度々、泣きながら見てますが)好きなんですが、何故あれほどに心を打つのでしょうか。
 ジャックが長年、心のよりどころとしてきた山でのイニスの抱擁は、きっとジャックの中でどんどん甘美な神聖なものに変わっていったと思うのです。
 映画では映像ならではの表現がされていますし、原作ではプルーが苦しみつつ推敲を重ねたというBBMの白眉でした。

 またDVDを見たくなりましたので、本日はこのへんで。

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ブロークバック・マウンテン(191)

2006013111324088 本日はまたキリスト教がらみの話なんですが。町山さんのこの記事にはぶっとびました。「ドニー・ダーコ」をご覧になった方はご存じでしょうけど、キリスト教主義といっても妙な学校も多くて。ミシェルが「同性愛の映画に出た」ことで縁を切られた母校もその類?

 アメリカはプロテスタント信者が新天地を求めて移住し建国されたわけですが、今や宗教の坩堝でもあるのですよね。町山さんの「キリスト教徒のアルカイダ」が懸念してるようにイスラム勢力の拡大。「エクソシスト」を見たときは、なんでカトリックのイエズス会(といえば、あのザビエル。GTOじゃないスよ・笑)なんだ? と怪訝に思ったものですが。建国後、どんどんカトリック国からも移民がきたのでございました。

 ところでザビエルってバスク人だってご存じでした? BBMでは食料調達係で登場しましたね。バスク人については(21)に書いてます、よろしかったらご覧ください。そしてそしてバスク人は、今日の本題、堀田善衛の小説「路上の人」とも関わりがあるのです。

 この小説を読んだ当時、私はカタリ派という異端に魅せられて関連書籍を読みました。カタリ派の聖職者は常に2人で行動したため同性愛と間違えられたということも知りました。13世紀に彼らは十字軍によって殲滅させられるのです。彼らが最後に立てこもったのはモンセギュールという山上の城でした。

【モンセギュールの山そのものは、それは、山などというよりも、太い釘のように屹立した、一つの<岩>であった。誰がモンセギュール、すなわち、安全なる山、と名づけたかはもとより明らかではなかった。(中略)

 西、南、北の三面は、おそらく七十度以上の斜度を持つ、高さ二百メートルに及ぶ断崖であり…】

 難攻不落と思われたモンセギュールですが、山の民・バスク人によってその攻略ルートを発見されてしまいます。その後の悲劇はとてもここに書く気になれません。結末を知って、この小説を買ったはいいけど、1年も読めずに放置してたくらいですから。

 カタリ派とBBM、もちろん全然違います。ただ、今バチカンは十字軍を誤りだったと認めている。今では同性愛を批判しないプロテスタントの教会もあるとメールを頂きました。そりゃそうですよねー、元々、批判される筋合いはないのですから。

 とってもヘンテコな記事になりましたが、「路上の人」については一度、書いてみたかったので。

 お付き合いいただき、ありがとうございました。

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